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メモリーズ ~第七章 目撃 その1~


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第七章 目撃 その1

 

今日は五月三日だ。

世間ではゴールデンウィーク真っ盛りだ。

基本的にインドア派の俺は休日は家にいる事が多い。

それはゴールデンウィークでも変わらない。

今は彼女もいないし、外に行っても特にする事はない。

たまに来る友達の誘いも何かと理由を付けて断っている。

外に行って、友達とワイワイ遊ぶよりは家で体を休めていた方が自分にとって、よっぽど有意義な時間の使い方だと思うからだ。

 

仕事は最近不調だ。

気晴らしにたまにはどこかに行き、息抜きをでもするか。

しかし、どこに行くんだ?

誘う相手もいないし、男と過ごす位なら家にいた方がマシだ。

だったら、一人で行動するか。

でも、どこで何をする?

一人で行動しても可笑しくないのは買い物位か。

 

俺はお茶を一口飲んだ。

彼女の事が気になって、外に出る気にはなれないでいる自分もいる。

とは言ってもこのままアパートへいても会える訳はない。

 

俺は唇の裏側を前歯で噛んだ。

・・・・・そうだ。

もし、彼女があの岩本町駅付近の会社で働いているならば、休日も新宿線を利用するかもしれない。

そうなれば、もしかしたら、休日の平均的な帰宅時間、つまり、夕方位にあの路線に乗れば会えるかもしれない。

その可能性は全くない訳ではない。

普通アパートを借りる時、出来るだけ会社の近くに住む筈だし、同じ路線だと自宅から会社まで乗り換えもしない方で済む。

だから、新宿線の近くの駅に住んでいる可能性だってある。

・・・・・よし、こうしよう。

夕方近くまで、岩本町駅近くで買い物をして、十八時位に新宿線に乗る。

普通に考えたら、会える訳ない。

しかし、もしかしたらという事もある。

ここは行動を起こすべきだ。

 

俺はテーブルの上に置いてあったファッション誌を開いた。

適当にページを捲り、岩本町にある店の中から一番欲しいと思ったカーゴパンツの写真にボールペンで丸を描いた。 

俺は早速、パジャマからなるべく自分でお洒落だと思う私服に着替えて、微かな希望を抱き、アパートを出た。

 

まず、近くの行き付けのラーメン屋で昼食を済ませた。

あの古丸海斗を発見した日に行こうと思った店だ。

色々な事があって、ここ最近行っていなかった。

これが味わいたかったのだ。

 

そして、腹ごしらえを終えた俺は西日暮里駅に向かった。

駅に着くと改札を通り、千代田線に乗車した。

車内の人混みはまずまずだった。周りを見渡すと、老若男女様々な人間がいた。

若い女の香水の匂い、年増女の化粧の匂い、若者の汗の匂い、親父の加齢臭、様々な匂いが混ざり合い車内に充満する。

俺は呼吸を軽くし、被害を最小限に食い止めたが、それでも多少の匂いは鼻に漂って来る。

 

暫くして、電車は新御茶ノ水駅に着いた。

ここで新宿線に乗り換えだ。

俺は一目散に電車から逃げ、改札に向かった。

暫く歩き、小川町駅の改札を通り抜け、発車メロディーが鳴り始めた電車に駆け乗った。

発車してから直ぐに、電車は岩本町駅に着いた。

小川町から岩本町までは一駅しか離れていない。

歩いても直ぐに着く。

人混みから解放された俺は改札を抜け、ファッション誌に書いてあった店を探した。

 

今日の都内の最高気温は二十二度だ。

歩き回ると少し暑い。

暑さに耐えかねた俺は近くのコンビニに寄って、冷たいお茶を買って、三分の一程度まで一気に飲んだ。

一瞬で喉が潤った。

 

地図が苦手な俺は随分遠回りして、汗を額に垂らしながら、店を見付けた。

自動ドアを抜けると見つめた先はダークな空間だった。

店内は壁や棚にクロスバイクが置いてあり、西洋人のモデルのポスターが飾ってある。

様々な色や形の服が店内を埋め尽くしている。

普段、そこら辺のチェーン店で買い物を済ましてしまう俺にはあまり縁のない店だ。

たまにはこういう店に来るのも悪くないが店員の「いらっしゃいませ」の一声がなかったのは頂けなかった。

どんなに拮据でも自動ドアの開く音が聞こえたら、折角来てくれた客に対して、ちゃんと出向かうべきではないのか?

こういう事はちゃんとしないと、少しイラついてしまう。

 

俺は不満を抱えながら歩を進めた。

パッと見渡した感じ延床面積二十坪はあるだろうか。

螺旋階段付きの二階建てになって、商品棚が壁全体に広がって、上手く空間を広く使うように利用している。

この周辺の他の店に行った事はなかったが、比較的ここら辺の中では広い方の店だと思った。

それ程、儲かっているという事なのか?

まぁそんな事、買い物さえ出来ればどうでも良いが。

俺には服を買う時、ある拘りがある。

今はそっちの方が気掛かりだ。

ファッションセンスがない事も自覚しているが、店員に話し掛けられると途端に買う気がなくなる。

昔からの悪い習性だ。

 

話し掛けられないように願った俺はまず、お目当ての黒色のカーゴパンツを眉間に皺を寄せながら探した。

適当にパンツコーナーを物色していたら、直ぐ見付かった。

雑誌に書いてあった通り、税込みで八千四百二十円だった。

 

「あのー、すみません。これ試着しても良いですか?」

 

俺はカーゴパンツを手に持って近くで服を畳んでいた男の店員に話し掛けた。

 

「はい、どうぞ、こちらへ」

 

試着室まで連れて行かれた。靴を脱いで試着室の中へ入り、店員がカーテンを閉めた。

 

「裾直しお願い出来ますか?」

 

三分後、着替え終わった俺はカーテンを開け、店員にそう話し掛けた。

 

「かしこまりました。どの辺までで宜しいでしょうか?」

「そうですね、この辺までお願いします」

 

俺はしゃがみ込み、裾を捲くった。

 

「かしこまりました」

 

店員がそう言うと、カーテンを閉め、俺は自分が着て来たジーンズに着替えた。

仕上がるまでの間、適当に目に入り一目惚れした夏用の半袖Tシャツも手に持った。

十分後、店員に呼び出された俺は半袖Tシャツとカーゴパンツの会計を済まし、店を出た。

 

無事に買い物を終えた俺は歩きながら腕時計を見た。

今は十五時四十分を回った所だ。

まだ、十八時まで結構時間がある。

これからどうやって時間を潰そうか迷った。

もう特に行きたい所はない。

いや、もう歩きたくはない。

これ以上歩いても疲れるだけだ。

 

俺は近くの喫茶店に入った。

直ぐに案内された席に座り、ホットコーヒーを注文した。

店内には俺が好きな音楽グループであるアークティック・モンキーズのFluorescent Adolescentが流れている。

悪くない雰囲気だ。

壁一面に大きく飾ってある海の絵のセンスも壮大さを現わされていて良い。

 

「お待たせ致しました」

 

暫くしたら、注文を聞いた店員と違う店員がコーヒーを持って来た。

若い女だ。

悪くない。

その女店員はテーブルにコーヒーとミルクを置いて「ごゆっくり」と告げて去って行った。

俺はガムシロップとミルクをそれに入れ、スプーンで掻き回し、少し経ってから一口啜った。

 

それから、コーヒーを啜りながら、スマホを弄りながら二時間潰そうとした。

しかし当然、それだけでは二時間を潰せる訳でもなく、さっきの若い女を一瞥したり、店内においてあったファッション誌や週刊誌を読んだ。

それから、何気なく腕時計をみたら、十七時三十三分だった。

意外と早く二時間潰せられると思った。

 

十七時四十分、俺は手に荷物を持って、岩本町駅に向かった。

 

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