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戦慄の傀儡師: レントシリーズ (MyISBN - デザインエッグ社)

戦慄の傀儡師: レントシリーズ (MyISBN - デザインエッグ社)

  • 作者:神田 将宏
  • 発売日: 2020/01/13
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)

メモリーズ ~第七章 目撃 その2~


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第七章 目撃 その2 

 

俺の気持ちは高まっていた。

足が自然と速くなった。

茶店を出てから、十分程で駅に着いた。

俺は階段を降り、改札を抜け、新宿線のホームへ向かった。

 

正直、こんな程度ではまた会える訳ないと思っている。

でも、少しでも可能性があるのならば、俺はどんな事でも厭わない。

自分でも怖いがそれ程、今でも彼女に夢中だ。

 

ホームに着いてから二分後に電車に乗った。

空いている座席もあったが、俺は吊革を強く握り締め立ち、直ぐに電車が発車した。

 

周りを見渡すとお目当ての彼女はやはりいない。

いるのは学生っぽい者や年寄り、主婦ばかり達だ。

手に荷物を持っている者が多いイベントや買い物帰りか?

さぞ、楽しい休日を過ごしたに違いないだろう。

 

電車が発車してから暫く経った。

不審者に思われないように基本的には窓を見つめていた。

誰も俺の本心に気付く筈ない。

それから、十五分経過した。

電車が停まる度に、俺は電車内の車両を移動して、乗車客を見渡した。

しかし、そこには彼女の姿はなかった。

当り前と言えば、当り前だ。

もうこれ以上期待しない方、いや、もう現れる訳ないと思っていた方が後で落胆しないで済む。

今日は前から欲しかった服も買ったし、出掛けた事自体は意味があった筈だ。

よし、後十分経ったら諦めよう。

丁度その頃、新宿線も終点の新宿に着く頃だ。

家までは遠回りになるが、久しぶりに新宿に行く事も出来て、今日の休日はアパートや実家でゴロゴロしていたより有意義に使えた筈に違いない。

 

それから、五分経過した。

やはり彼女は現れない。

ふと、窓に映る自分を見た。

自分でも気づかない内に仁王立ちをしながら眉間に皺を寄せて、強く腕組みをしていた。

 

何故、吊革にも掴まらず、俺は自然とこんな事をやっているのだ?

まだ、どこかで期待しているのか。

それとも一向に俺の期待に応えられないでいる彼女に対して、怒りが沸いているのか?

だったら、自分が厭わしい。

何もしていない彼女に対して、こんな態度を執ってしまい申し訳ない。

 

更に三分経過した。

俺は諦めかけていた。

やはり、こんな事では何万分の一の奇跡が起こらない限りもう一度彼女に会える訳ない。

そんな奇跡起こる訳ない。

当たり前だ。

淡い期待をした俺が馬鹿だった。

 

・・・・・よし、もう諦めた。

完全に吹っ切れた。

しかし、ついでだ。

新宿まで行こう。

 

電車が九段下駅に止まった。

諦めた俺は後方から車内に乗って来た集団を見た。

そして、その中から周りとは違う雰囲気を醸し出している一人の女に気付いた。

 

・・・・・うん?

・・・・・まっ、まさか、あれは、おっ、・・・・・織村加奈ではないか。

・・・・・右下の泣きホクロ。

まっ、間違いない。

 

またしても奇跡が起こった。

体が固まってしまった。

体が動きたくても動かせない。

興奮している。

血液も一瞬で沸騰し始めた。

 

冷静さを取り戻した俺は神に感謝し、運命というものを初めて感じた。

・・・・・いや、この線に乗っていれば、また絶対にいつか会えると思っていたからだ。

それは自分で叶えさせたもので誰かに叶えさせて貰った訳ではない。

・・・・・そうだ。

それよりもこれから、どうする?

声を掛けるか?

急な展開でそこまでは頭が回らなかった。

 

・・・・・三度目のチャンスで念願を叶えたい。

このままでは五日前と同じ後悔を味わってしまう。

 

覚悟を決めた俺は勇気を出して、彼女に歩み寄った。

彼女との距離がどんどん縮まる。

今日はスーツ姿ではなく、グリーンを基調としたワンピース姿だ。

それもとても似合う。

最初の一声は「もしかして、新三中学校の織村加奈さんですか?」だ。

俺は足のスピードを緩めない。

 

しかし、彼女の顔がはっきり見える位置まで来た時、俺は一瞬躊躇ってしまった。

これは勇気がなかったからではなかった。

彼女の表情が怖く、何やら近寄りがたいからだ。

とても、声を掛けられる雰囲気ではない。

「近づくな」、「話し掛けるな」オーラが滲み出て周りに伝わっている。

・・・・・どうする?

今彼女に声を掛けても、鬱陶しがられるだけではないか?

普段、山野に対して俺が持っている感情と同じだ。

だったら、少し待ってから話し掛けた方が良いのではないか?

 

そう考えた俺は一旦、計画を中止する事にした。

一体今、彼女は何を考えているのか?

何か、気に障る事でもあったのか?

そういえばさっきから鞄を大事に抱えている。

当たり前と言えば当たり前の事なのだが、どうも彼女の強い握り具合が気になる。

 

暫くの間、そんな事を考えていると、電車の速度が緩んだ。

彼女は扉付近に移動した。

どうやら、この駅で降りるらしい。

車内の案内を見ると、新宿三丁目駅だった。

 

俺は迷った。

これから、彼女の後を追うかどうかを。

俺は彼女の事が今でも好きだ。

しかし、このまま追跡し、気付かれてもしたら、お終いだ。

どうする?

人生の中でこれが本当に最大の選択だ。

 

・・・・・最後のチャンスだ。

追跡しよう。

もうこのチャンスを逃してしまったら彼女に二度と会えないかもしれない。

・・・・・しかし、これはまだストーカーではないよな?

その一歩手前ではありそうだが。

 

意を決した俺は彼女と同じ駅で降りた。

こういう時、降りる駅を自分で後から決められるSuicaは有難い。

彼女は一体これからどこへ向かうのか?

丸の内線かそれとも副都心線にでも乗り換えるのか?

それともここで降りるのか?

 

そう推測しながらホームから移動して彼女の後を追跡した。

いや、この方向は改札だ。

どうやら、ここで降りるらしい。

俺は後ろから、気付かれないように慎重に足を進めた。

彼女は一体これからどこに向かうのだ?

歩くスピードが妙に速い。

あの深刻そうな顔だったのはこれから男との別れ話があるからなのか?

 

そんな事を考えていると彼女は改札を抜け、足早に歩道に出て歩いて行った。

俺もそれに続いた。

 

今日の天気は朝から快晴に恵まれ、絶好のお出掛け日和だった。

しかし、今ではすっかり日は沈み、街の街灯が点灯され、新宿の夜道を明るく照らしている。

足の裏が悲鳴を上げる前に止まりたいものだが、そうはいかなそうな相変わらずのハイスピードだ。

彼女はどんどん先を行く。

 

先程よりも速いのではないのか?

もう早歩きと認識出来る位のスピードだ。

そんなに急いで一体どこへ行くのだ?

俺も彼女を見失わないようにペースを速めようと思った。

 

しかし、その時!

突然、彼女が後ろを振り返った。

彼女との距離を保った俺は咄嗟に停まって車道を見た。

頭の中は放心状態だ。

緊張で手には汗が湿り、腿から足の裏にかけて身震いもしている。

今にも心臓は爆発しそうだった。

俺はゆっくり深呼吸をした。

そして、三十秒程経ったら、ゆっくりと目線を車道から歩道に変えた。

彼女は既に前を向いて、歩き出していた。

 

・・・・・どうやら、気付かなかったらしい。

しかし、今でも心臓の音が聞こえそうだ。

彼女はそんなに周りを気にして一体、どこに行くのだ?

俺には無縁の悪の巣窟に行くのか?

だから、険悪な表情で周りを気にしているのか?

その真相は今は分からない。

兎に角、その答えを見付ける為に彼女に付いて行くしかない。

 

それから、五分経った。

俺達は今、明治通りを歩いている。

俺は彼女に追跡を気づかれない、彼女を見失わないような絶妙な距離を保って追跡している。

 

それから三分が経過し、彼女は明治通りから道を曲がり、路地裏に入って行った。

三十秒程してから、俺もそれに続いた。

さっきよりも彼女と俺の距離は長くなったが、確かにその先にいた。

俺は追跡を止める事はしない。

百に一つもない奇跡が起きて、折角ここまで来たのだ。

どんな結末だろうが、最後まで見届けたい。

俺はその一心で慎重に歩を進めた。

 

それから三分程歩き、彼女はまた、道を曲がっていった。

俺も慎重にそれに続いた。

道が先程よりも狭い。

車一台がやっと通れられるくらいの間隔だ。

周りの街並みもすっかりビルから狭い住宅へ変わっていた。

人間の心理として、目的地まで最短距離を通りたがるのが普通だ。

しかし、彼女の歩いた軌跡はそれに反している。

絶対に目的地まで遠回りしている。

だったら、一体何の為?

・・・・・まさか、全く人気のない所を探しているのか?

俺の恐怖は更に増した。

 

それから暫くして彼女が遂に立ち止まった。

辿り着いた先は住宅の真ん中にポツリとあった小さな空き地のような所だった。

俺は隙間に隠れて、こっそりその様子を見る事にした。

心臓の鼓動が伝わって来る。

額から汗がこぼれ落ちる。

 

周りに人はいない。

まだ相手は来ていないのか?

それとも悪縁など存在しなかったのか?

しかし、だとしたら何故一人でこんな所まで来たのか?

こんな所でこれから一体何をするのだ?

 

俺は生唾を飲んだ。

次の瞬間、彼女は鞄から何やら取り出した。

カシャカシャと音が聞こえて来る。

・・・・・袋を取り出したのか?

暗くて、良くは見えないがその可能性は高い。

そしてまた、その中から何かを取り出しているようだ。

それを取り出し終わったら、彼女はそのまま地面にしゃがんでしまった。

今、彼女が何をやっているのかは見えないが、右肘だけがリズミカルに動いている事だけは判った。

 

・・・・・もしかして、土を掘り返しているのか?

そうだ。間違いない。

さっきから聞こえて来る土を掘り返すシャキッとした音とそれを放り投げるスッとした音で判った。

だとすれば、今右手に持っている物はスコップか?

さっきはスコップを袋の中から取り出したのか?

 

数秒後、彼女がその作業を終えた模様だった。

しかしそれも束の間、今度はまた、別の袋の中から何かを取り出していた。

 

一体、今度は何を取り出したのだ?

・・・・・うん?

今度はさっき掘った土を埋めているぞ。

・・・・・そうか、今袋から取り出した物を埋めているのか。

 

俺はその様子を黙って、そこから十メートル程、離れた斜め右の住宅と住宅の隙間から、傍観するしかなかった。

不気味と奇異が頭の中に駆け巡る。

一体、彼女はさっきから何故、こんな奇妙な事をやっているのか?

暗くて、彼女の表情は分からないが、黙々と謎の作業をしている事だけは判る。

俺はこの行動に恐怖、いやショックを感じた。

あの清爽な彼女の理想とは掛け離れた姿に。

自然と足が後退した。

 

暫くして、彼女の手が止まった。

作業が終わったのか?

彼女が立ち上がった。

やはり、終わったのか。

暫く、そのまま立ち尽くしていた。

最終確認か?

突然、彼女がこっちを振り向き、早歩きでやって来た。

ヤッ、ヤバい!

俺は道を背にして、しゃがみ息を殺し、目を瞑った。

心臓が爆発しそうだった。

足音の音が大きくなって来た!

無呼吸状態だ。

どんどん近付いて来る!

みっ、見付かる!

 

しかし、段々と足音は小さくなっていった。

どうやら、途中で方向転換らしい。

俺は勢い良く、息を吐いた。

しかし、それでも心拍数は上昇したままだった。

 

・・・・・意外な展開だった。

彼女がした事は俺の想像を遙かに超えていた。

勿論、何を埋めたのか気にはなる。

しかし、それ以上に怖い。

彼女の予期せぬ行動と電車の中の畏怖の表情に。

どうする?取り敢えず、作業場には行ってみるか?

・・・・・取り敢えず、それだけは確認したい。

 

俺は恐怖を抱えながらも、彼女がさっきまでいた場所まで歩を進めた。

そこに辿り着き、地面を見ると、やはり何か埋めた痕跡があった。

 

・・・・・どうする?

掘り返すか?

しかし、危険な物や他人に見られたくない物が出てきたらどうする?

禁断の扉を開けてしまうのか?

しかし、その扉を知りたいのもまた事実。

・・・・・やろう。

折角ここまで来たんだ。

今の彼女の陽と陰、全てが知りたい。

ここにその答えがあるかもしれない。

意を決した俺は素手で土を掘り返し始めた。

 

自分でもこれはいけない行為だとは分かっている。

しかし、彼女が俺をそうさせるのだ。

あの彼女がこんな事をするなんてまだ信じられない。

そこまでして隠そうとした物とは一体何なのだ?

今は只、それが知りたい。

 

手の爪を切るのをサボっていたせいで指と爪の間に土が入る。

しかし、俺はそんな事気にもせず、無我夢中で土を掘り返した。

 

・・・・・うん?

何やら、土の中から強く匂って来た。

悪臭が俺の鼻に突く。

この腐った匂いはまさか・・・・・。

 

「うわっ!」

 つい大きな声が出てしまった。

禁断のパンドラの箱を開けてしまった。

両手が震えている。

 

・・・・・ネッ、ネズミだ。

土の中から、ネズミの死骸が出て来た。

あの虫も殺さなそうな彼女が死んだネズミを埋めるなんて・・・・・

 

今の彼女は俺の知っている彼女とは違うのか?

・・・・・いや、偶々、死んでいたネズミを発見し、それを土の中へ帰してあげたのだけかもしれない。

その可能性は少なからずある。

でもしかし、わざわざあれだけ移動してする事なのか?

それだったら、近所の土の中でも良いのではないか?

何故わざわざ電車で移動し、こんな人気のない所に埋めたのだ?

もしかして・・・・・。

 

悪の彼女と正の彼女のイメージが俺の中に混在した。

・・・・・うん?

この症状は・・・・・まさか。

この症状は最近見たことがあった。

 

あの古丸海斗と同じ症状ではないか!

毒だ。

嘔吐や麻痺した後が残っている。

これもテトロドトキシンなのか?

 

たじろいだ。

彼女が毒を使って、ネズミを殺したのか?

周りを見渡すと、誰もいない。

いるのは死んでいるネズミと俺だけ。

 

この状況での俺の結論は彼女が毒を使って、このネズミを殺しただ。

これ以外には出せなかった。

 

しかし、どうする?

これは警察に知らせるべき事なのか?

俺は暫く考えた。

 

警察に知らせ・・・・・るのは止めよう。

まだ、彼女がネズミを意図的に殺害したと決まった訳ではない。

何か事情があったのかもしれない。

きっとそうに違いない。

 

俺はネズミを再び土の中に埋め、路地裏を後にした。

空き地を去る際、後ろを振り返った。

 

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