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メモリーズ ~第八章 詮索~


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第八章 詮索

 

今日は風の強い日だ。

朝は肌寒かったが昼には温かくなってきて、絶妙な風、気温から生み出された居心地の良さが俺の体を包み込む。

この感触が堪らなく好きだ。

 

春の昼の温かさ。

スズメが鳴く音。

風が窓に当たる音。

 

半開にした窓からそよ風が部屋に吹き込み、ベッドの上に横たわっている俺の顔に当たる。

全ての音が奏で出すハーモニーが最高の心地良さを引き立たせ、俺を眠りの世界へと誘う。

学生時代、窓の隣の席が多かった俺は懐旧した。

給食を食べた後の午後一番のつまらない授業。

春の風が強い日には窓を開け、全開の風が俺の上半身に当たり、その二重になってしまった窓にも強い風が当たり、接触音を奏で出す。

外ではスズメが鳴き、唯一の邪魔は授業中の教師の大きな声だった。

 

今はそれを邪魔するものはない。

俺が学生時代から追い求めていた理想の快哉だ。

この所、何かと忙しかった。

このまま、ずっと眠りたい。

・・・・・ずっと。

 

目が覚めた時はいつの間にか三十分以上経っていた。

頭の中がまだぼんやりしている俺は冷蔵庫の中からペットボトルに入っているウーロン茶を取り出し、一杯コップに注ぎ、一気に飲み干した。

 

寝ぼけが収まった俺は昨日の事を思い出した。

昨日の彼女の行為は犯罪なのか?

区の条例違反なのか?

そんな事、俺には分からなかったが、恐怖がある事だけは確かだ。

あの織村加奈がネズミを毒で殺害するなんて。

しかし、何故そんな事を・・・・・。

どうする?

このまま見て見ぬ振りをすべきなのか?

それとも、彼女がした事を警察に告げるべきなのか?

俺が彼女のやった理由を突き止めるべきなのか?

 

昨日の一件で古丸海斗の事も俺の中で復活した。

同じような毒で両方共、死亡した。

まだ、古丸海斗の事で警察からの連絡はない。

という事は彼女は現時点で古丸海斗殺害の容疑で警察に疑われていない事だ。

しかし、昨日の一件はそれに反している。

彼女は古丸海斗が死亡した原因の毒と同じような毒を使って、ネズミを殺害した。

という事は古丸海斗を殺害した犯人は彼女かもしれない可能性が出て来たという事だ。

しかし、こんな事で彼女を古丸海斗殺害の容疑者として、認定しても良いという訳ではない。

あくまで可能性の話だ。

 

今、俺の心は疑懼で満たされている。

暫く、放心状態になっていた俺は意識を復活させ、ノートパソコンを立ち上げて、テトロドトキシンについて調べた。

症状はやはり、全身麻痺、呼吸困難、嘔吐を経て、最終的に意識がなくなり、死亡するという物だった。

俺は昨日のあのネズミと古丸海斗のあの姿を可能な限り思い出して照らし合わし、それが同じ症状だった事を再認した。

 

それから少しの間、何も考えられなかった。

・・・・・取り敢えず、彼女と古丸海斗の関連性は頭の片隅に置いておこう。

しかし、ネズミの殺害は別だ。

これは厳然として事実がある。

何か事情があって、あんな事をしたと思いたい。

それを知る為には確証が必要だ。

だったら、調べるしかないではないか。

・・・・・やろう。

この事実を知っているのは彼女と俺だけだ。

俺がやるしかない。

これも八年越しの運命かもしれない。

彼女はもしかしたら、一人悩みを抱えているかもしれない。

だったら、俺が助けてやる。

 

そう意を決した俺は、頬を両手で強く叩いた。

そうとなれば、まずは彼女の居場所を突き詰めるべきだ。

出来れば、勤め先が知りたい。

しかし、どうやったらその情報を入手出来る?

それを知る手掛かりもない。

唯一、知っているのはスーツ姿の彼女が岩本町駅に降りて行った事だけ。

そこから、どうやって彼女の勤め先まで調べるのか?

良い案が思い付かない。

 

・・・・・このまま悩んでいても仕方がない。

取り敢えず、もう一度彼女が降りたあの岩本町駅に行ってみよう。

そうすれば、何か手掛かりが掴めるかもしれない。

よし、そうと決まればあの駅に行って訊き込みをしよう。

そう計画を立てた俺は一呼吸した。

 

それから九日間経った。

今日も天気も良く、絶好のお出掛け日和だ。

 

これから岩本町駅に行くのだが、身支度をしながら自分の事件を思い出していた。

それは彼女が空き地でネズミの死骸を埋めてから一週間後の事だった。

俺は彼女の事が気になりやはり仕事に身が入らなかった。

しかし、その間も当然、週に一度の法人の営業もあった。

その取引相手とは服やアクセサリーのネット販売の新規顧客であった。

その商談のパートナーは間野であったのだが、先方でトラブルになってしまった。

仕事に対して意欲が更になくなった俺は商談の際、高圧的な態度を執ってきた先方に対して強気になってしまったのだ。

そこから、口論が始まったのだが、きっかけは俺のある説明不足からだった。

しかし、あれは俺だけの因業ではなかったと今でも思っている。

先方の第一印象はそこまで悪くなかったのだが、実はとんでもない野郎だった。

そのとんでもない野郎の名前は確か久保だったか?

人間、嫌な事は覚えているものだ。

 

「・・・・・ですから只今、御説明させて頂きました通り、ADSLモデムをこちらで用意する事は出来ません」

「出来ませんと言われてもね。こちらで用意すべきだと?」

「いっ、いえ、用意出来ないと言っても単純にそれをこちらで用意出来ないという意味ではなく、貸す事は出来るのですが、差し上げる事は出来ないという意味です。また、それは毎月のインターネット通信の利用料に含まれずに、毎月の利用料金が別途発生してしまいます。また、もし借りるのではなく、法人で所有したいのでしたら、それを御社で買い取って頂くという形も出来ます」

 

俺の説明不足に間野が補足してくれた。

 

「そういう意味だったらちゃんと説明してくれないと、君」

 

 まぁ、これは俺が悪かった。素直に謝ろう。

 

「説明が不足してしまい、申し訳御座いません」

「君、こちらの方はちゃんと、自分の会社の事、本当に理解しているの?自分が完璧に理解していなくちゃ他人に説明なんか出来ないよ」

 

俺に直接言わずにわざわざ間野を仲介して言う事なのか?

しかし、これもその通りだ。素直に認めよう。

 

「仰る通りで御座います」

「仰る通りで御座います?君、私を馬鹿にしているの?」

 

 なんだ、この親父は?喧嘩を売っているのか?

 

「いえ、決してそんなつもりはありません」

「ありません・・・・・か。そこは「御座いません」でしょう。君、敬語の使い方、勉強した方が良いと思うよ」

 

こいつも山野と同じタイプの人間か?

 

「申し訳御座いません」

 

しかし、ここはこの親父の言う通りにするしかない。

 

「心がこもっていないね」

「申し訳御座いません。話を元に戻しても宜しいでしょうか?」

 

間野が助け船を出してくれた。

 

「ええ、私は構いませんよ」

 

そっちから喧嘩を売っといて、何だ、その態度は?

 

「有り難う御座います。引き続いて工事の話なのですが、御社は電話回線を引いておりますので、現在、弊社の御契約をご検討して頂いています回線はADSLの為、工事は全く不要です。そこから、ADSLモデムを置いて頂く形となります」

「ADSLなら通信速度は当然、光回線よりも遅いし、安定していないよね」

「ええ、仰る通りです。しかし、ADSLの通信速度はNTTの基地局から近い程、速くなりますが、弊社の回線はADSLでも上がりも下がりの通信速度は他社の回線と比べて御覧の通り、速くなっております」

 

間野が資料の通信速度の比較データに手を広げそう説明した。

 

「速いのは良いね」

「ええ、有り難う御座います。また、法人様向けの契約では固定IPアドレスも最大16個まで選べる事も可能です」

「最大16個か」

「ええ、サーバー構築やもしインターネットVPN構築を御検討しているのでしたら、大変便利で御座います」

「うちは仕事柄、多くのメールサーバーを構成しないといけないからね。IPアドレス16個は便利だな」

「ご導入、如何でしょうか」

「・・・・・確かに通信速度は他社と比べて速そうだけど、でもこれ実験値じゃなく、理論値だよね。本当に当てになるの?」

「いえ、こちらの値は理論値ではなく実験値です。正確に条件を同じと何回も実験をして平均の値を取った数字です」

「そうなの?まぁ、それは一応信用しようかな。だけどちょっと、他社と比べて料金が高いかな?ADSLでIPアドレス16個でこの価格でしょ」

「もし料金の方がネックなのでしたら、固定IPアドレスを8個や1個にして料金を下げる事も可能で御座います」

「・・・・・君はうちは毎月何千円の差を払えない赤字会社とも言いたいのかね?」

 

何か知らないが急に怒り出したではないか。

大丈夫か、頭?

 

「いっ、いいえ、そんなつもりは毛頭御座いません」

「いいかい、うちは光通信でも良いだよ。只、うちの事務所はNTTの基地局に近いから、光よりADSLの方が速いかもと考えてADSLにしようとしているんだ。お金の問題ではない」

「申し訳ありません」

 

こいつの店を俺は一生利用しない。・・・・・いや、一回買って、レビューを最低評価にしよう。

 

「だから、さっきも言った通り、「申し訳御座いません」でしょ」

「はい、そうで御座いましたね。大変、申し訳御座いませんでした」

 こいつは只単に、自分に構って貰える遊び相手が欲しいだけではないか。

「ちょっと今のままなら悪いけど見送りかな」

「どこかご不満な点等が御座いますのでしょうか?」

「うーん、不満と言うかなんかね」

 

なんだったのだ。今までのやり取りは?

こいつはまともに商談する気はあるのか?

 

「そこを何とか御検討して頂けないでしょうか?」

「お願いされてもね。通信速度も他社と比べて、ちょっと速い程度、料金も他社と比べて少し高い。オプションも普通。これでそこを何とか御検討して頂けないでしょうか?と言われてもね。・・・・・」

 

こいつは只、冷やかしたいだけなのか?そっちから商談を持ち掛けて来たのだぞ。にもかかわらず最初から、契約する気はなかったのではないのか。俺は拳を机の下で強く握った。

 

「・・・・・そこを何とかお願いします」

「君もしつこいね。そんな哀願紛いな事をされてもこっちも困るよ」

「しつこいのが私の売りですから」

「そんな事、私に押しつけられてもね」

「申し訳御座いません」

「それにこちらの方はさっきから不貞腐れて黙り込んでいるようですしね」

 

久保が顎で俺を指してそう言った。

今更、その事での揚げ足取りか。本当に嫌な野郎だ。もうそんな事、とうの昔に忘れても良いだろう。俺は只、あんたが間野の方が相性が良いと思って、もう、余計な事を言わずに誤解が生じなくて済むから黙っていただけだ。

 

「そんな事は滅相も御座いません」

「そうかね。でもそういう風には見えないんだけど」

「それは久保様の目が狂っているだけではないでしょうか?」

「おっ、おい」

 

隣に座る間野が小さな声で俺を止めに入った。

しかし、俺は冷静だ。

 

「・・・・・まだまだ、何も知らないひよっ子の迂愚若造が社会において、目上の人に向かって盾ついちゃいかんよ」

「何も知らないのはお互い様でしょう」

「不愉快だね」

「それはこちらもです」

「おっ、おい、お前いい加減にしろ」

 

さっきよりも少し大きな声で間野が俺を止めに入った。

 

「そうかね。そんなにここがお気に召さないのならば、こちらの方と共に今直ぐ、お引き取り頂いても結構ですよ。通信会社は御宅だけではなく他にも沢山ありますからね」

「いえ、帰りません」

「客である私が帰れと言っているんだ。それを拒否する権利は君にはないと思うがね」

「商談を持ち掛けて来たのはそちらですから、こちらの話が終わるまで最後までそれに応じるのがそちらの責任だと思うのですが。閑事業なようなので時間を持て余しているでしょうし」

「おい!」

 

間野が俺のスーツの袖を引っ張って直接止めに入った。

 

「ここまで失礼だと怒りを通り越して呆れるよ」

「申し訳御座いません」

 

間野が丁寧に謝った。

何故、謝るのだ。

こいつは只単に自分より立場が低い者に対していたぶりたいだけなんだ。

謝る必要は何もない。

 

「君も謝罪してね」

 

逆だろ。そっちが謝れ。

 

「私は謝罪するような事は言ってはおりません」

「礼無しか。・・・・・話になりませんね。お引き取り下さい」

「ええ、失礼します」

 

啖呵を切ってしまった。

しかし、もう後には引けない。

俺は立ち上がり、この嫌み野郎に目も合わせず出口に足早に向かった。

 

「おっ、おい!」

「何をしているんだい。君も早くしたまえ」

 

久保が俺達が用意した資料を机の反対側の方に投げ付けた。

俺はその様子を出口で立ち尽くしながら観ていた。

 

「あっ、はい、大変な失礼をしてしまい、誠に申し訳御座いませんでした。・・・・・失礼致します。」

 

間野が資料を集め持ち、立ち上がり、深々と頭を下げ、俺達は足早に事務所を出た。

勢い良く外に飛び出した俺は地面を片足で強く蹴った。

仕事で感情を露わにするのは初めてだ。

 

「ああ、もうムカつく!」

 

俺は街中で大きな声で叫んだ。通行人達が俺に注目する。

気狂いとでも思われているだろう。

しかし、俺はそんな事、一切気にしていない。

そして、直ぐに、間野が俺に追い着いた。

 

「おっ、おい、お前、何しているんだよ!」

 

俺の肩を強く掴んだ間野の第一声は今までで俺が聞いた中で一番大きな声だった。

 

「あいつは、最初から契約する気がなく、暇潰しで俺達をからかってみたかっただけなんだよ!」

「だとしても、あの態度は無いだろ!」

「だけど、お前もムカついただろ!」

「そうだけど、商談相手と喧嘩するなんて聞いた事がないぞ!」

「いや、今頃あいつは計画が上手くいったと微笑んでいるに違いない!」

「それでも、一応大事な取引先だろ!」

「すまない、だけどどうしても許せなくて」

「・・・・・お前、何か変だよ。最近今日どうかしたのか?」

「すまない、ちょっと色々あって」

「だけど、仕事とは関係ないだろう」

「そうだな。本当に申し訳なかった」

 

俺は間野に頭を下げた。

間野はこれ以上俺を咎めはしなかった。

本当に良い奴だ。

俺達黄金コンビに軋轢が生まれる事はなくて本当に良かった。

 

帰りの電車の中、終始会話がなかった。

これからの展開は読めていた。

俺達は電車の中で覚悟を決めた。

案の定会社に戻ったら、早速あの糞親父から会社にクレームが入っていた。

俺達は佐々木に事の経緯を説明し、直ぐさま俺達はあの糞親父の元へ佐々木と共に謝りに行った。

俺達は土下座をし、何とか許しを貰えた。

勿論、会社に帰ったら佐々木からこっ酷く叱られた。

しかし、ある程度話を誇張して事情を説明したら、それ以上の御咎めはなかった。

この会社は本当に打算で繋がっていると改めて思った。

 

そんな苦い事を思い出していたら、気付いたら岩本町駅に着いていた。

間野には申し訳なかったが、俺はあの親父の事が許せなかったそもそものこの原因はやはりあの彼女が放置したネズミの死骸だったと思う。

これ以上、同期にも会社にも迷惑は掛けられない。

それを今から解決しに行く。

早速俺は窓口に座っている駅員に声を掛けた。

 

「あのー、すみません。この駅をいつも利用しているスーツを着ている清楚な感じの女の人って見覚えありませんか?一応これが昔の写真なんですが」

 

俺は今の彼女の特徴を言い、卒業アルバムから彼女の顔写真だけを撮ったスマホを駅員に見せた。

 

「う~ん。見覚えないですね。すみません」

「・・・・・そうですか。有り難う御座いました」

 

一日何万人と利用するこの駅で、一人の女を探し出すなんて事、至難の業だという事は判っている。

しかし、まだ一人目だ。根気良く探し続けさえすれば、いつか当たるかもしれない。

次に俺はホームにいる駅員に声を掛けた。

 

「あのー、すみません。この駅をいつも利用しているスーツを着ている清楚な感じの女の人って見覚えありませんか?一応これが昔の写真なんですが」

「いえ、分かりませんね」

「・・・・・そうですか。有り難う御座いました」

 

二人目も失敗だ。

しかし、諦める訳にはいかない。

次だ。

 

「あのー、すみません。この駅をいつも利用しているスーツを着ている清楚な感じの女の人って見覚えありませんか?一応これが昔の写真なんですが」

「知りませんね」

「・・・・・そうですか。有り難う御座いました」

 

三人目も同じく失敗だ。

まだ、諦めない。

まだ、他の駅員はいる。

 

「あのー、すみません。この駅をいつも利用しているスーツを着ている清楚な感じの女の人って見覚えありませんか?一応これが昔の写真なんですが」

「すみません、分かりません」

「・・・・・そうですか。有り難う御座いました」

 

四人目、結果は同じく失敗だ。

また他の駅員を探した。

 

「あのー、すみません。この駅をいつも利用しているスーツを着ている清楚な感じの女の人って見覚えありませんか?一応これが昔の写真です」

「申し訳御座いません、私の方では分かりかねます」

「・・・・・そうですか。有り難う御座いました」

 

五人目。

またしても、失敗だ。

しかし、俺の根気はまだ続いていた。

俺はまた歩き出した。

しかし結局、六人目も七人目も失敗に終わってしまった。

・・・・・これだけ訊いたんだ。

もうこの駅で働いている全ての駅員に訊いているかもしれない。

 

正直もう、手掛かりを掴むのは無理だと思った。

自分でも出来る限りの事はやったと思った。

・・・・・諦めるか。

いや、折角ここまで頑張ったんだ。

今こそ、一年間あの会社の営業で培った辛抱強さを発揮する時ではないか。

絶対に諦めない。

 

・・・・・そうだ。

駅員ではなくこの近くのコンビニの店員とかに訊いてみてはどうだ?

彼女が毎日この駅を利用しているなら、駅の近くのコンビニ位行くだろう。

もし、彼女が常連客のコンビニだったら、彼女を知っていても可笑しくない。

何故、今までこの事に気付かなかったのだ。

 

俺は最後の望みとして、この近くのコンビニを徹底的に回ってみようと決め、天に祈った。

まず駅から一番近くのコンビニに入り、レジにいた年配の男性店員に声を掛けてみる事にした。

 

「あのー、すみません。この女性に見覚えはありませんか?このコンビニをいつも利用しているかもしれないのですが」

 

俺はスマホを見せ、そう訊ねた。

 

「ええーと、・・・・・うん?ああ、もしかしてあの人の事かな?」

「本当ですか!」

「ええ、一年程、前から殆ど毎日利用して頂いていますからね。日常会話なんかもたまにしていますよ」

 

ビンゴだ。

一発目で当たった。

奇跡が起こった。

いや、俺の作戦が功を奏したのだ。

 

「名前は判りますか?」

「確か、織村加奈さんだったような」

 

当たりだ。

やはり、彼女は織村加奈だった。

 

「すみません、もしかして、彼女の勤め先など分かりませんか?」

 

名前を知っているなら、もしかしたら勤め先も。

 

「えーと、確か、うちで煙草を買って貰った事があったけな。買った事があったのならばうちにはその際に身分を証明出来る物を見せてもらう規則があるので、その時に恐らく、社員証か免許証を見せて貰った筈だから社員証を見せて貰ったら覚えているかもしれませんね。ちょっと思い出しますから、少し待っていて下さい」

「はい、お願いします」

 

しかし彼女が煙草?

想像出来ない。

・・・・・いや、先輩の買い出しかなんかだろう。

そうに違いない。

 

「・・・・・ああ、そういえば、確か三カ月程前に初めて煙草を買って貰った時に、見せて貰った身分証明証は社員証だったな」

「本当ですか?でしたら勤め先は覚えていますか?」

「勤め先ね。うーん、えーと、ミワ何とかじゃなく、ワタキでもなく、・・・・・確か飲食業のあの会社・・・・・何とかフーズ・・・・・マル・・・・・ああ、思い出した。確かマルワフーズだ。ほら、全国展開している居酒屋チェーン会社の」

 

その会社は俺も知っていた。

過去に二回程、合コンでそのフランチャイズチェーン店を利用した事があった。

二回共、俺が幹事だったから、覚えていたのだが今はそれよりもこの店長の強記に恐れがいっている。

 

「貴重な情報、有り難う御座います」

 

俺は店長にそう礼を言って、缶コーヒーをレジまで持って行き、フランクフルトと肉まんを買い、コンビニを後にした。

 

これでやっと、彼女の事について本格的に調べられる。

明日以降が勝負だ。今日はもうこれで帰ろう。

今度は彼女が勤めているマルワフーズに行って、社員から彼女の事を色々と訊き出そう。

 

俺はコンビニの外でフランクフルトと肉まんを食べ、意気揚々としながら、アパートへ帰った。

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