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メモリーズ ~第十二章 真実~


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第十二章 真実

 

日はすっかり暮れ、今は雨模様だ。

昼間の快晴が嘘のように降り続けている。

さっきコンビニで買ったビニール傘から天を見上げた。

ビニールに当たる雨音が一定のリズムで鳴り続け、垂れ落ちた水滴が地面に落ち続けている。

俺の気持ちはこの空と一緒だ。

彼女の気持ちに痛い程共感していた。

俺もどうしようもない上司を常日頃から恨んでいる。

しかし、俺は殺意までは持たなかった。

これからもそれを持つ事はないだろう。

それが警察に話す事に決めた決定打だったと思う。

 

明南大学からそのまま警察署まで足を運んだ。

ここまで来ると暫く、立ち止まってしまった。

このまま帰ろうかと一瞬思った。

俺が今日、真実を話す事で彼女のこれからの人生を変えてしまうだろう。

しかし、俺の決意は変わらなかった。

このまま殺人を看過する事は出来ない。

例え、初恋の相手に一生恨まれようとも。

意を決した俺は警察署の自動ドアを通り抜けた。

 

受付で事情を説明した俺は取調室に案内された。

今日もあの加藤と言う刑事が対応してくれた。

まず、警察に話していない事実、つまりネズミの死骸が発見された経緯まで一通り話した。

 

「つまり、君はネズミを毒で殺害した織村加奈という女が古丸海斗を殺害した犯人と同一人物だと?」

「はい、そうです」

「本当にかい?」

「ええ、間違いないと思います」

 

俺の中ではそれが揺るぐ事のない確かな確証がある。

 

「なら、その根拠を訊かせてくれないかい?」

「分かりました。俺の推理を話します」

 

少しの間、目を瞑って呼吸を整えた。

呼吸の音が耳に伝わる。

意を決した俺は勢い良く目を開いた。

 

「まず、織村加奈は同じ会社で働く、ある人物に対し、日頃から殺意を抱いていた。その人物は端的に申し上げますと、大手居酒屋チェーン店のマルワフーズという会社のエリアマネージャーの真砂という男です。そして、その殺意の理由は日頃から彼女はその真砂さんから無理な業務を課せられ、パワハラやセクハラを受けていたからです。これは会社の同僚の小島さんという社員にそう証言して貰いました。しかし、それを受けていたのは彼女だけではありませんでした。他の社員もそれを受けていた。よって、真砂さんを恨んでいる者つまり、真砂さん殺害の動機を持っている者は沢山いますから、犯人を特定するには物的証拠しかありません。だから、彼女はこれなら、自分だけに疑いの目は向けられない、自分が殺害したという事を警察に割り出されないように真砂さんを殺害する事を決意し、その犯罪方法を考えた。そして、彼女は真砂さんが常日頃から持っているある癖を利用して、誰が毒を盛ったのか判らなくし、自然と毒を真砂さんの体内に摂らせようとしたのです」

「真砂の癖?」

「はい、実は先日、事件の事で織村加奈の会社に行って、偶々真砂さんに会って来たのですが、彼には何か食べる時や飲む時、必ず、親指を舐める癖がありました。つまり、その癖を利用して、織村加奈は真砂さんを殺害する方法を考えたのです」

「織村加奈が真砂の知らない間に親指に毒を塗るという事か・・・・・」

「いいえ、織村加奈は真砂さんに気付かれないように、毒を塗らなければならないので、それは限りなく不可能です。毒を塗る場所は親指ではありません」

「では一体、どこに織村加奈は毒を塗ろうとしたのだい?」

「それを話す為にはまず、マルワフーズの内情を話さなければなりません」

「どういう事だい?」

「織村加奈は真砂さんを殺害するならば当然、自分が殺害する事を周りには知られたくなかった。したがって、毒をオフィス内で摂ってしまっては、真砂さんはオフィス内で死亡する事となり、それでは容疑の目が自分に向けられてしまう可能性が高くなります。だから、彼女は毒を塗る場所と物を工夫して、自分に容疑の目が向けられないようにして、真砂さんを殺害しようとしたのです」

「毒を塗る場所と物の工夫で自分への疑いを回避するのか。一体、それが出来る場所はどこなんだい?」

「毒を塗る場所は勿論、会社内です。それ以外に織村加奈は真砂さんに接触する機会がありませんからね。しかし、会社内でのある場所のある物に塗れば、それを回避出来ると考えたのです」

「一体、どこで何に織村加奈は毒を塗ろうとしたのだい?」

「マルワフーズ本社の調理室です」

「調理室?」

「はい、実はマルワフーズは定期的に毎月第三月曜日に新商品候補の試食会が開かれるのらしいです。そして、その時、最初に試食するのはエリアマネージャーだとマルワフーズの社員の方が言っていました。つまり、最初に試食するのは真砂さんという事になります。織村加奈は「商品開発部の人間が作った料理を食べて死亡した真砂さんを殺害したのはその料理を作った商品開発部の人間だ」と警察に思わせる為に調理室に忍び込み、自分への疑いを回避しようとしたのです。そして、織村加奈はその為に調理室のある物に毒を塗り、真砂さんを殺害しようとしたのです」

「その物というのはもしかして、新商品に使う食材かい?」

「いいえ、違います。実は最初、俺もそれだと思っていました。しかし、それではある問題が起きるので駄目だと気付いたんです」

「ある問題?」

「はい、そうです。それだと確実に真砂さんを殺害出来ないからです」

「どうしてだい?」

「何故なら、もし、商品開発部の人間が真砂さんよりも前に料理の味見や試食をしてしまったら、真っ先に商品開発部の人間が死ぬ事になります。他人に料理を出す前にそれをするのは当り前ですから、その可能性の方が高いでしょう。勿論、商品開発部が新商品候補を作った後に毒を入れるという手もありますが、料理を作ったら、直ぐに真砂さんの元へ運ばれると思いますし、その間に織村加奈が商品候補に毒を入れる隙も時間もない筈です。ですから、食材に毒を入れては駄目なんです」

「言われてみればそうだね。では、一体何に塗ったのだい?」

「当然、織村加奈はその試食日当日から開発部の人間が料理をする前の間に毒を塗らなければなりません。何故なら、試食会当日に毒を塗る事によって、他の社員にこれが毒の塗ってある物だと昨日以前に判らせないようにする為です。言い換えれば、その物とは調理前に織村加奈が毒を塗れる物でそのままずっと、真砂さんが毒を摂るまで誰にも触れさせない物です。尚且つ必ず、真砂さんが毒の付いた物を自分の指に接触する物でもなくてはなりません。勿論、親指を舐める癖を利用して、殺害しようとしているのですから、接触させるのは親指です。それら全てを包括する物とは・・・・・紙ナプキンです」

「紙ナプキン?」

「はい、調理室のテーブルに置いてある紙のナプキンなら、次使われるのが次その部屋で食べ物を食べる者と限られて来ます。つまり、当日の朝、一番手前に置いてあるナプキン使う者は試食者である真砂さんという事になります。だから、彼女は箸やフォークやスプーン等の一旦、使う前に洗われるという物を避け、ナプキンを毒を塗る物として選んだのです。誰でも触れるテーブルに置いてあるナプキンなら、織村加奈にも毒は塗れます。親指にも勿論接触します。何故なら、真砂さんの癖である何か食べる時や飲む時に必ず、親指を舐めるという行為をした後に、自分の指を必ず拭くからです。それもこの前この目で見ました。その時拭く物と言えば、当然今、自分の前の前にあるナプキンです。つまり、そこに毒を塗っておけば、親指に毒が付くという事になります。これはこの前、俺が偶然、ある店でフライドポテトを食べている時に手が油で汚れてしまって、無意識にテーブルの上にあったナプキンで手を拭いている時に気づきました。誰でも手が汚れたら、ナプキンを使って、それを拭きます。それは大体手で食べる物、俺の場合は油がたっぷりのフライドポテトでしたが、その時、手をナプキンで拭きました。普通に手が汚れてしまっても手でナプキンを使い拭き、テーブルを汚してしまった時もナプキンを使って、テーブルを拭きます。しかし、真砂さんにはそういう事は不必要で構わないのです。何故なら、真砂さんには何か食べる時や飲む時に必ず、親指を舐めるのでナプキンを使って、自分の唾液を拭き取る事になります。つまり、試食品がそういう手で食べる料理でなくても、真砂さんが試食の時、偶然、テーブルを汚してしまう事や手を汚してしまう事に織村加奈が期待しなくても良いという事になります。織村加奈の一度目の真砂さんの自分の親指を舐めるという行為の目的とは、毒が塗ってあるナプキンを使わせて、毒を親指に付けさせる事です。真砂さんはまた次の料理が出てきたら、その都度、指を舐める行為をします。それもマルワフーズの社員の方が証言してくれました。よって、試食は複数の新商品候補がありますから、一つ目の料理を食べ終わったら、二度目の指を舐める行為も当然する筈です。勿論、料理を食べる際、スプーンやフォークや箸等を使えば、毒はそっちにも付いてしまい、親指の毒の量が少なくなるかもしれません。しかし、親指には拭くという行為で毒は付いているのである程度の毒が付いていると思いますから、持つという行為で毒が付いてしまったスプーンやフォークや箸にはあまり付着しないと思います。その程度の親指の毒の量でも殺害させるだけの効果は充分な筈です。つまり、織村加奈の真砂さんの二度目の指を舐める行為の時に毒を体内に送り込み、死亡させようとしたのです」

「・・・・・確かにその方法なら、織村加奈は自分を容疑者候補の中から外させ、真砂を殺害する事が可能ではあるな」

「はい、一カ月前の試食会の日、彼女は日頃の鬱憤を晴らす為に真砂さんに仕返し、いや、殺人を実行してやろうと思った。そして、当日朝一番に会社に来て、誰もまだいない内にいざ、調理室のナプキンに塗ろうとしたが、小島という社員が偶々朝早く会社に来てしまい、織村加奈が毒をナプキンに塗ろうとして、鞄から毒を取り出そうとしていた姿を目撃してしまった。それに気付いた彼女は咄嗟に毒を隠し、一先ず、小島がいなくなるのを待った。彼女は小島がいなくなった後も毒を塗ろうと思えば出来たが、躊躇いが出てしまい出なかった。そして、仕方なくその日は諦める事にした」

「織村加奈はその時、殺人を実行しなかったのか」

「はい、そしてその日の夜、織村加奈の帰宅途中、ある男が彼女に声を掛けて来た。その男こそ死亡した古丸海斗だったんです。そして、俺は後日、古丸海斗の通っていた明南大学に足を運んだのですが、キャンパスメイトだった学生の話によれば、彼は相当な女たらしの男でした。そして、ここからは俺の推測なのですが、偶々、あの日森下公園前を歩いていた古丸海斗は帰宅途中だった織村加奈を発見した。そして、彼女を一目で気に入り声を掛け、森下公園に誘導した。しかし今日、真砂さんを殺害出来なく、イライラしていた織村加奈は更にその古丸海斗の執拗さに嫌悪していた。それでも執拗に声を掛けて来る。そこで思った。今日出来なかった、今持っている毒をこの男に試してはどうかと。そして、織村加奈は今目の前にいる男の姿を良く見てみると、肌寒い夜にもかかわらず、半袖のTシャツ一枚にジーンズという姿だという事に気が付いた。そこで織村加奈は公園に自販機がある事を確認し、トイレに行く等の適当な理由を付けて一旦、古丸海斗から離れ、それが終わったら自販機のホットコーヒーを買った。そして、自分で缶の蓋を開け、そこに毒を注入した。そして、待っていた古丸海斗に毒入りの開封済みの缶コーヒーを渡した。偶々、声を掛けて来た古丸海斗はまさか自分が毒を混入させられた缶コーヒーを渡された事など露知らずそれを飲み、間もなく体内に毒が回って、直ぐに倒れた。そして、織村加奈は地面に落ちている缶コーヒーから自分の指紋を拭き取って、今度は素手で触らないようにして藻掻きながら倒れている古丸海斗の指紋を無理矢理付け、その缶を放置し、その場から急いで立ち去った。しかし、思ったよりも毒素が弱く、古丸海斗は即死しなかった。勿論、一目散に逃げた織村加奈はその場では古丸が死亡したか、死亡していないのか確認出来なかったのですが。そしてその数分後、帰宅中の俺が偶々、そこを通り掛り、警察と救急車を呼ぶが、古丸海斗は間もなく死亡した。恐らく、このような流れだったのでしょう。つまり、古丸海斗が殺害された理由は入手した毒が本当に効果があるのかの実験材料に使われたからだったんです。言い換えると、織村加奈が古丸海斗に対し殺意があったから、毒を注入したのではなく、結果的に古丸海斗は死亡したのです。しかし、真砂さんに盛るつもりだった毒をそのまま入れなければ、毒の効力を正確には測れませんので、死亡する事は予め判っていたのでしょうが」

「・・・・・なるほど」

「はい、そして、織村加奈は古丸海斗が死亡したのをニュースで知って、真砂さんを殺害しようと決めた。しかし、彼女には懸念があった。毒の効果が弱いと。織村加奈は自分が注入した毒の量で古丸海斗は即死しなかったのでこの量では足りないと思った。もし、真砂さんに今回と同じ量の毒を使用したのならば、真砂さんは即死しない。即死しなければ何かしらのダイイングを残されてしまったり、自分が犯人だと特定される物を残されてしまう可能性が出てしまうからです。こんな事をした犯人は普段の接し方から織村しかいないと真砂さんは苦しみながら思うかもしれません。織村加奈も勿論、自然に自分がやったとは本人にも分からないように毒素を注入するつもりだとは思いますが、念には念を入れて、即死させようと思っている筈です。よって、結果的には真砂さんの殺人を順延して良かったと思ったかもしれません。そこでもう一回毒の量を調節し、実験しようと考えた。それがネズミの実験だったんです。案の定、毒素を強くした結果ネズミは即死した。そして、家の近くにネズミの死骸を放置するのはまずいと思い、家から離れた場所の土の中にネズミの死骸を埋め、それを俺が見てしまった。データを手に入れた彼女は今、真砂殺害計画を実行しようとしています」

「今も織村加奈は真砂に殺意を抱いていると君は思っているのかい?」

「はい、あの日にネズミが殺害されていたという事から、毒の量を人間でも死亡する量に調整したという事です。より多くの毒の量でのネズミの殺害は古丸海斗の殺害より後の事なのでネズミの毒による実験的殺害はこれからまだその時、毒を使いたいからという事になります。つまり、現在も織村加奈は真砂さんに殺意を抱いているという事になります」

「・・・・・確かに、君の話からすると、ネズミを殺害した毒が古丸海斗を殺害した毒よりも強い毒素を使用したのならば、織村加奈は今でも真砂に殺意を持っているという事になるな」

「はい、そして、これは俺の推測なのですがもしかしたら、一カ月前、織村加奈は真砂さんに対して、殺意までは持っていなかったのかもしれません。只、少しの毒を持って、体調不良程度にするつもりだったのかもしれませんし、いざ当日になって、毒を塗る行為自体やっぱり止めようと思っていたかもしれません、散々、織村加奈は真砂さんを殺害しようとしていたと言って来たのにもかかわらず、こんな事、突然言ってしまい申し訳ないのですが」

「・・・・・どうして、そう言えるのだい?」

「それはその時、真砂さんにまだ家族がいたからです。マルワフーズの社員の方の話によれば、真砂さんは最近奥さんと離婚してしまったそうです。一カ月前の試食日はまだ真砂夫妻の離婚前だったのです。つまり、織村加奈は自分の恨みとは関係のない残される奥さんの事を思い、殺人を躊躇ったのだと思います。だからその時、毒を入れなかった。いや、入れる事が出来なかった。その時、持っていた毒は効力が弱い毒も持っていたのかもしれません。・・・・・しかし、織村加奈は今、真砂さんに対して強い殺意を抱いていると思います」

「どうしてそう言えるのだい?」

「それは、真砂さんが離婚してしまい今は独り身だからです。元々、子供もいないという話でした。それもマルワフーズの社員の方が証言してくれました。もしかしたら、元奥さんも真砂さんの事を憎んでいるかもしれないと織村加奈は真砂さんの離婚の事でそう考え、それが殺人を決行しようと決意させた決定打だったのだと思います。ですから、織村加奈はもう迷いなく殺人を実行しようとしている筈です。つまり今、真砂さんに殺意を抱いているので、その離婚の後、ネズミの毒殺を決行したのです」

「そうなのか」

「はい、彼女があの日、計画を中止した一番の理由はこれだったと思います」

「・・・・・しかし、確たる証拠がない以上、織村加奈を抑える事は出来ないな」

 

加藤刑事が腕を組みながら、そう嘆いた。

 

「それなら、大丈夫だと思います。織村加奈が真砂殺害計画を決行するのは恐らく明日の筈です。そこを抑えましょう」

「何故、明日だと判るのだい?」

 

加藤刑事が両方の掌を机の上に乗せてそう訊いた。

 

「明日が第三月曜日でその日は月に一回定期的に行われる新商品の試食会の日だからです。織村加奈はそこを必ず、狙う筈です」

「なるほど、そういう事か。だったら、必ず明日毒を持っているという事になるな。・・・・・よし、明日彼女が出勤する時、抑えよう」

「しかし、織村加奈が古丸を殺害した根拠や動機だけではなく決定的な証拠がなければ、証拠不十分で逮捕までは出来ないかもな」

「すみません。言うのが遅くなったんですがその証拠も実は俺がもう見付けていると思います」

「証拠を見付けている?一体、それは・・・・・」

「はい、実は今日の昼頃、古丸海斗が殺害された森下公園の近くの道路でこのネックレスを発見したのです」

 

俺はハンカチで包んでいるネックレスを見せ、加藤刑事が布を用意して受け取った。

 

「これが証拠?」

「はい、そうです。古丸海斗が倒れていた現場の近くの道端にそのネックレスが落ちてありました。そして、それを見てみるとご覧の通り、壊れていました。つまり、あの警察が見付けた現場で飛び散っていた金属の破片はそのネックレスの破片だったのです。それが古丸海斗の物だと先程、古丸海斗が通っていた明南大学のキャンパスメイトに確認を取ったら、やはりそうでした。そして、何故、その古丸海斗の壊れたネックレスが公園の道端に落ちていたのか?それは恐らく、こういう流れで落ちていたのです。古丸海斗は俺が発見した時はまだ死んでいなかったので、ダイイングメッセージを残せる時間はあった筈です。ダイイングメッセージを残せるのならば、犯人がその場から立ち去った後に地面の砂にその犯人の名前を書くなりして、必ずダイイングメッセージを残す筈です。しかし、彼の周辺にはそういった物が何もなかった事は警察の皆さんも知っている筈です。ダイイングメッセージが残せる状態だったのにもかかわらずそれがなかった。その理由は案外簡単な事です。古丸海斗はあの日あの時、初めて織村加奈と会ったのだから、織村加奈の名前といった情報が分からなかったので、ダイイングメッセージを残したくても残せなかったのです。つまり、織村加奈という名前のダイイングメッセージは残せないので、名前のダイイングメッセージはあの~な女とか書くしかありません。当然、そんなのはダイイングメッセージにはなりません。そこで、苦しんでいる古丸海斗はこう咄嗟に考えた。ダイイングメッセージを名前以外で残せないか?そして、思い付いた。この憎き女の指紋を使えないかと。彼女の指紋を使えば、それはダイイングメッセージになるのではないのかと。指紋なら、自分が知らなくても後で警察が調べれば、ダイイングメッセージになり、自分が持っている物にこの女の指紋を付ければ俺に毒を飲ませた犯人はこの女しかならないと。そこで古丸海斗は最後のあがきとして、無理矢理、自分の持ち物に織村加奈の指紋を付けて、それをどこかに投げようとした。それが偶々首に掛けていたネックレスだったのです。だから、あの現場にはそのネックレスの破損部の一部、恐らくチェーンが落ちてあったのです。そして、それを自分の首から勢い良く引きちぎり、それに無理矢理、織村加奈の手を掴んで指紋を付けさせて、倒れながら遠くに投げたのです。古丸海斗が倒れながら、壊れたネックレスを投げた理由は織村加奈は自分の指紋を古丸海斗の物に付けさられたので、現場にダイイングメッセージを古丸海斗が残そうと間違いなく気付いていた筈です。折角、苦労して付けた織村加奈の指紋付きの物をその場にそのまま置いてしまったら、当然、織村加奈に直ぐに持って行かれてしまい処分されてしまいます。だから、織村加奈に後から、探しても見付けられないように後で誰かに発見されるように願って、どこかに投げたのです。ネックレスだったら、小さくてそれなりに重い物ですから、風でどこかへ飛んで行ってしまう可能性もないですし、遠くへ投げやすいので古丸海斗はダイイングメッセージの媒介として、それを選んだのです」

「しかし、毒を摂ってしまって苦しんでいる古丸海斗は正常な状態である織村加奈の手を握り、強引に指紋を付ける事なんて出来たのだろうか?」

「いや、一度だけそれが出来るチャンンスはある筈です」

「チャンスがあった?」

「はい、あった筈です」

「一体、いつそのチャンスがあったのだい?」

「それは織村加奈が缶コーヒーに古丸海斗の指紋を付ける時です。織村加奈が自分の指紋を缶コーヒー付ける時、古丸海斗が今度はお返しとばかりに近寄って来た織村加奈の手を強引に引っ張り、ネックレスに指紋を付けて、それを直ぐにどこか遠くに放り投げたのです。さっきも言いましたが俺は今日の昼間、織村加奈が古丸海斗を殺害した証拠を探す為、古丸海斗の倒れていた周辺を詮索しました。しかし、必死に探してもなかなかそれを見付けられませんでした。推測は間違いだったのかと諦め掛けていた俺は古丸海斗を発見した時、古丸海斗が地面に倒れて、呻き声を上げながら、必死である行動をしているのを思い出しました。それは苦しみながら、俺に指でどこかを指していたという事に気付きました。最初はそれが何を示しているのか分からなかったのでしたが、その時で俺がもし古丸海斗の立場だったらとして、毒で苦しんでいる喋れない自分を助けにやって来てくれた者に何を伝えたいかを考えました。それは翌々考えれば当り前な事ですが、犯人の正体な筈です。つまり、その指を指した行為は自分が投げたダイイングメッセージの場所を示したのです。そして、その古丸海斗が指示した付近は公園の外のある場所でした。その数分後、遂にそのネックレスを発見したのです。つまり、そのネックレスから織村加奈の指紋が検出されたら、織村加奈が古丸海斗を殺害した証拠となる筈です。何故なら、織村加奈はそれまで古丸海斗と一回も会っていなかった。つまり、織村加奈は古丸海斗が死亡した直前に初めて会ったという事になりますから、毒をまだ摂っていない古丸海斗に最後に会った者が犯人という事になるからです」

「・・・・・確かに君の言う通りだね」

「はい」

「全く、君のお手柄には恐れがいったよ」

「いいえ、それに気付いたのは実は俺の推測だけではないんです」

「というと?」

「はい、実は今日、俺があの公園で織村加奈が古丸海斗を殺害した証拠を見付けようとしている最中に通行人のある御婦人が偶々、地面に這いつくばって、証拠を探していた俺に声を掛けて来てくれたのです。の御婦人は今、俺と同じ事を最近若い女がやっていたと言って来ました。俺はその人物が織村加奈と推測し、それをやっていたのは事件後だったともその御婦人は言っていました。だから、織村加奈があの公園で探していた物があるという事は、それは警察がまだ発見していない証拠が必ずあるのだと思ったので、捜索に確信を持つ事が出来たのです」

「いや、それでも充分凄い事だよ。この事件が解決したら、君に表彰しなければな」

「いえ、御遠慮なく」

「・・・・・よし、早速、鑑識に回して確認を取ってみよう。我々が現場で見付けた金属の破片の損傷部がそのネックレスの損傷部と一致するかどうかも含めて」

 

そう言うと加藤刑事は鑑識の者を呼んで、証拠品を渡した。

 

「本来、我々がやらなければならない事をこんなに一般人である君にやって貰って、何と言うか申し訳なかったね」

「いえ、あくまで俺が突き止めたかった事でしたから、結果的に捜査のお役に立てて良かったです」

「そうか、有り難う。・・・・・いや、御協力感謝します。また、申し訳ないついでであれだけど、直ぐにネズミが埋めてあった場所を教えてくれないかい?今も埋まっているのだろう?」

「はい、明治通りから住宅街に入った路地裏です。これだけでは判らないと思うので付き添って俺が案内します」

「申し訳ないがお願いするよ。直ぐに手配させよう」

 

加藤刑事は携帯電話をスーツの内ポケットから取り出して、部下へ連絡した。

 

「・・・・・計画を止めさせましょう」

「そうだね。明日、織村加奈の会社の前で張り込みをしてみよう。直ぐに手配だ」

 

加藤刑事がそう言うとまた、部下が動き出した。

俺は下唇を噛んだ。

緊張を抑えているからだ。

何故、突然緊張し始めたというと俺にはやりたい事があったからだ。

長年の夢だ。

このままではそれが出来なそうだ。

伝えなければ。

 

「・・・・・あのー・・・・・」

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