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マクロ経済スライド


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今回は前々回の「40年後に年金は貰えるのか?」の記事に出た2004年から、年金に導入されているマクロ経済スライドについての詳細を説明します。

 

まず、年金額の改定の基本的な考え方を説明します。

 

公的年金は、予め予測できない現役期から高齢期に至る長期間の経済社会の変動や国民生活水準の向上に対応し、その時々の経済状況の中で実質的な価値を維 持した年金を保障する事が求められてきました。

 

経済成長の果実は、基本的には、稼働する現役世代の賃金水準等に反映され、国民生活の向上に繋がります。

また、年金給付の財源となる保険料収入は賃金水準に連動します。

こうした考えのもと、年金の給付水準は賃金水準の動向に対応して改定することを原則におき、財政再計算時には賃金再評価や政策改定を行うとともに、財政再 計算の間の年は物価スライドによる改定を実施してきました。

 

このような考え方を原則としつつ、一方で、少子高齢化が急速に進展していく中で、 将来世代の負担を過大なものとしないよう、改定のルールに一定の調整措置を講じてきました。

具体的には、1994年に可処分所得スライド、2000年に既裁定の年金の改定は物価スライドのみとすること、さらに、2004年には、固定した保険料率の中で長期的な給付と負担の均衡を図るために、賃金再評価や物価 スライドに対して一定の調整を講じるマクロ経済スライドを導入しました。

 

従来の年金額の計算式と2018年度の給付額を用いマクロ経済スライドを適応した計算式による月の年金給付は以下の通りです。

 

*従来の年金額の計算式

基礎年金

804200円×保険料納付月数 / 480月×物価スライド率÷12

 

厚生年金

平均標準報酬×5.481 / 1000 ×被保険者期間(月数)÷12

(平均標準報酬額:過去の賃金(ボーナス込み)を現在価値に置き換える)

 

*2018年度の給付額を用いマクロ経済スライドを適応した計算式

基礎年金

779292円×保険料納付月数 / 480月×改定率÷12

 

厚生年金

平均標準報酬×5.481 / 1000 ×被保険者期間(月数)÷12

(平均標準報酬額:過去の賃金(ボーナス込み)に再評価率を乗じて現在価値に置き換える)

 

改定率・再評価率

(年金を初めて貰う時)

前年度改定率(再評価率)×賃金上昇率(3年平均)×調整率

 

(年金を既に貰っている人)

前年度改定率(再評価率)×物価変動率×調整率

 

調整率=公的年金被保険者数の減少率(3年平均)×平均余命の伸びを勘案した一定率(0.997)

 

 

過去のそれぞれの時点の被保険者の平均標準報酬月額を、年金裁定時点での被保険者の平均標準報酬 月額と同じ水準にするという考え方で、それぞれの時点の報酬に係る再評価率を設定します。

これにより、賃金の上昇、生活水準の向上に対応した年金給付が保障されることとなります。

 

2000年まではこれまで、財政再計算に合わせて既裁定の年金を含めて賃金再評価や政策改定を行ってきたのを改め、 既裁定(65歳以上)の年金については、物価スライドによる改定のみとしてきました。

そこで、 賃金上昇率が物価上昇率を上回る分だけ将来の給付を抑制する効果が生じる仕組みを2000年に作りました。

 

既裁定者(年金受給後)の年金額は、物価に応じて改定されるため、マクロ経済スライド調整終了後は購買力が維持を期待され、既裁定年金と新規裁定年金の水準が2割以上乖離しないよう、措置をしました。

 

2004年改正による年金制度における長期的な財政の枠組みでは、上限を固定した上での保険料の引上げ 平成29(2017)年度以降の保険料水準の固定をし、 積立金の活用 概ね100年間で財政均衡を図る方式とし、財政均衡期間の終了時に給付費1年分程度の 積立金を保有することとして、積立金を活用し後世代の給付に充てる事にしました。

また、基礎年金国庫負担の2分の1への引上げ、 2009年度以降、基礎年金給付費に対する国庫負担割合を2分の1としました。

そして、少子高齢化が進行しても、財源の範囲内で給付費を賄えるよう、年金額の価値を自動調整する仕組み、マクロ経済スライドの導入をしました。

これは、現役世代の人口減少とともに年金の給付水準を調整。標準的な年金の給付水準について、今後の少子高齢化の中でも、 年金を受給し始める時点で、現役サラリーマン世帯の平均所得の50%を上回ります。

 2014年の財政検証の結果、基礎年金のマクロ経済スライド調整終了時期は2043年~2044年です。

 

そして、これは前年度の年金の名目額を下回らないようする名目下限措置が取られました。

具体的には、物価・賃金変動率がプラスの場合のみマクロ経済スライドを発動するという事です。

例えば、物価変動率が0.8%、マクロ経済スライド調整率が▲1.0%の場合、調整は0.8%分のみ として、年金額の改定率は0.0%となります。

 

高齢者への 影響は 物価・賃金変動率を圧縮し、年金の実質価値を減少させる事です。

そして、将来世代と比較すると高い水準(所得代替率62.7%)の年金が、徐々に低下させます。

調整終了後の将来世代への影響は現在の受給世代よりも低い水準の年金となりますが、マクロ経済スライド調整終了後も、新規裁定者の所得代替率50%を確保します。

そして、マクロスライドがないため、物価・賃金変動率のみによる、より高い年金改定が行われます。

 

現在、年金は以下の仕組みによって構成されています。

 

収入

1 保険料収入 ・・・ 賃金上昇に応じて増加

厚生年金:標準報酬月額×18.3%(労使折半)

国民年金:月16340円

 

2 国庫負担 ・・・ 税金が財源。全年金給付の2分の1を確保。給付の増加(≒賃金上昇)に応じて増加。

 

3  積立金 ・・・ 2001年以前の保険料収入によって集められたお金を積立金として、GPIFが2001年から運用。積立金と運用益から年金給付をしている。運用益に応じて増加する。

 

支出

4 年金給付 ・・・ 新規裁定年金の賃金スライドにより、おおむね賃金上昇に応じて増加。既裁定年金は物価スライドであるが、年金給付の長期的な動向は賃金 上昇に応じて増加する。

 

賦課方式を基本とした公的年金は、人口構造の変化による影響を除くと、収入(財源)、支出(給付)ともに 賃金水準の変化に応じて変動することとなります。

この性質により、激しい経済変動に対しても一定の安定性 を確保し、その時々の賃金水準に応じた年金給付を可能としています。

したがって、収入、支出の中で賃金上昇に連動しない部分が年金財政に大きな影響を与えます。

賃金上昇に連動しない部分は運用収入のうち運用利回りと賃金上昇率の差つまり、実質的な運用利回り(スプレッド)と既裁定年金の物価スライド、賃金上昇率と物価上昇率の差 (実質賃金上昇率)です。

 

そして、ある程度、賃金・物価が上昇した場合は賃金や物価について、ある程度の上昇局面にあるときは、完全にスライドの自動調整が適用され、給付の 伸びが抑制され、スライド調整率分の年金額調整が行われます。

 

また、賃金・物価の伸びが小さい場合は、賃金や物価について伸びが小さく、スライドの自動調 整を完全に適用すると、名目額が下がってしまう場合には、名目額を下限とし、スライド調整の効果が限定的になります。

 

また、賃金・物価が下落した場合は賃金や物価の伸びがマイナスの場合には、賃金・物 価の下落率分は、年金額を引き下げますが、それ以上の引き下げは行われません。つまり、調整はしないという事です。

 

マクロ経済スライドの仕組みについては、発動のタイミングが早ければ、早くからマクロ経済スライドにより 給付調整が行われるため、マクロ経済スライドの調整期間は早く終わります。

結果として、現在の受給者の給付水準は低くなり、将来の受給者の給付水準は高くなります。

逆に言えば、 マクロ経済スライドの発動が遅ければ、現在の受給者の給付水準は高く、将来の受給者は低くなります。

実質賃金低下は、マクロ経済スライドの調整開始時点の所得代替率の上昇をもたらし2004年、2009年の財政検証(財政再計算)時の想定に比べ、調整期間が長期化する事となりました。

 

そして、2018年に、キャリーオーバーというものが導入されました。

これは、景気後退面で調整できなかった分を景気上昇面の時に、その分を繰越し調整して、早くマクロ経済スライドを終わらせようというものです。

そうする事で、景気悪化時に発生するマクロ経済スライドの未調整分を、景気が改善したときに解消することにより、将来世代の給付水 準の上昇に繋がる事が期待されます。

 

今回はマクロ経済スライドの詳細を説明しましたが、これで前々回に説明した通り、現在の少子化の全く考慮されていない、欠陥した仕組みだという事が解っていただけたと思います。

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