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メモリーズ ~第三章 聴取~


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第三章 聴取

 

俺は警察と救急車が来るまで、必死に持っていた知識を引き出し、古丸海斗の介護に当たった。

水を口に含ませ、嗽をさせ、背中を叩いて体から毒を吐き出そうとした。

勿論、こんな事やりたくなかったがそんな事言っている場合にはさせてくれなかった。

 

そんな事をしながら十分程経ったら、救急車が来た。

俺は隊員に状況を説明した。

隊員達が素早く苦しんでいる古丸海斗を救急車に乗せ、他に人がいないという事で仕方なく俺もそれに同乗し、車内では一応は生存を祈る振りをした。

俺は今日、赤信号を無視出来る車に初めて乗った。

更に、隊員の呼び掛けとサイレンにより、一般人の車が停車し、道を譲ってくれた。

苦しんでいる古丸海斗には申し訳なかったが初めての経験だったので少し、優越感と高揚感に浸かってしまった。

 

そして、電光石火の車は十分程で近くの病院に着いた。

窓から、外を見ると病院の前で医者と看護師が出迎えていた。

昔、ドラマとかでみた光景がやはり、現実のままだった。

俺は急いで、その特別車を降り、医者達が古丸海斗を移動出来るベッドの上に乗せ、急いで治療室まで運んだ。

しかし、その時もう古丸海斗の意識は殆どなかったのだ。

そして、懸命の治療も虚しく古丸海斗は間のなく意識が完全になくなり、呼吸が停止して死んだ。

 

俺が救急車に乗って、公園を出た後、直ぐに警察が現場に来たらしい。

俺は病院に付き添わなければいけなかったので近くにいた声を掛けた人に事情を説明し、現場を預かった。

その後、暫くして病院に警察が俺を訪ねに来た。

理由は殺人事件の可能性があるから証言して欲しいとの事。

俺は仕方なく、それに同意して近くの警察署まで連れて行かれた。

場所は違えども何回かここにはお世話になったが、こんな形では勿論初めてだ。

 

俺は今、言われるまま廊下を進んでいる。

事情聴取室まで案内された。

俺はここに第一発見者という立場で来ている。

容疑者ではないから緊張しないと思っていたが、いざ入室したら、この部屋の空気感に緊張してしまった。

 

「・・・・・では、貴方が森下公園で倒れている古丸海斗を発見した時はまだ、彼は死んでいなかったと」

 

緊張しながらもまずは俺が初めに古丸海斗の発見された時の状況を説明し、それが終わると加藤と言う刑事にそう訊かれた。

如何にも警察の人間という厳つい顔付きだ。圧倒される。

 

「ええ、そうです。運ばれた病院で死亡しました」

「そうですか」

「はい、残念でしたが」

 

勿論、それは本心ではない。

 

「もう少し、当時の状況を詳しく訊かせてくれませんか?」

「分かりました。けど忘れてしまった事もあるかもしれませんが」

「ええ、覚えている事だけで結構ですよ」

「あの時、俺は仕事を終え、会社から帰る途中でした。で、暫く森下駅に向かって歩いていると、突然、不気味な呻き声が聞こえて来ました。怖くなってきたのですが、何だろうと気になって、その不気味な呻き声のする方へ行ってみると、森下公園で古丸海斗が苦しみながら、倒れていました。俺は走って彼に近づいて声を掛けたのですが、相変わらず呻き声を発し、苦しんでいました。口から泡を吹いて、指と口は小刻みに震えていました。俺はその様子を見て恐らく、毒なような物を体に取り込んでしまってこうなってしまったと考えました。で、慌てて、救急車と警察を呼びました。その後、その近くから中身がこぼれていた缶コーヒーが落ちてある事に気づき、それを飲んで古丸海斗はこうなってしまったものだと思いました。ちなみに、その公園にはその缶コーヒーが売ってあった自販機がありました。その缶コーヒーと同じものが自動販売機に置いてあるか確認するために、少しの間、古丸海斗から目を離しました。その後、相変わらず苦しんでいる古丸海斗に近づいた時には、更に症状は悪化していて、今度は全身が麻痺し震えていて、顔も真っ青になっていて、嘔吐もしていました。で、救急車が来るまで苦しんでいる精一杯の応急措置をしたのですが、その甲斐なく運ばれた病院で死亡しました。その後、警察の人が俺を病院まで訪ねて来て、今に至った訳です」

「貴方の言う通り先程、古丸海斗の死体を検証した結果、やはり、テトロドトキシンという一般的にフグ等が持っている毒を体に摂り込んでしまった事が原因で死亡したと思われます。そして、古丸の近くに転がっていた缶コーヒーの中から、同じ毒が検出されました」

 

やはり、毒だったか。しかし、今はそれよりもあの事が気になる。

 

「・・・・・そうですか。一つ伺っても宜しいでしょうか?」

「はい、良いですよ」

「これは殺人なんですか?」

 

それが一番知りたい。

 

「そうですね。今はまだ、物証や証言が足りないので、言いきれませんがその可能性は高いですね」

「・・・・・そうですか」

「ですけど、あの缶コーヒーに付いていた指紋は古丸海斗だけの物でした。勿論、だからと言って古丸海斗は自殺したなんて見解にはなりません。もし、殺人だったら犯人が自分の指紋を拭き取ってから、苦しんでいる古丸海斗の指紋を缶コーヒーに付けたり、犯人が元々指紋を付けずに古丸海斗に缶コーヒーを渡す事なんて当り前の事ですからね」

「・・・・・そうですね」

 確かにそれだけではこれは殺人ではないという証拠には何もならない。

「ええ」

「事件現場には何か殺人だとする手掛かりなどはあったのでしょうか?」

「まだ、手掛かりと言える物ではありませんが、古丸海斗の死体の周辺には何かの金属の破片が落ちていました。恐らく、それは古丸海斗の物か犯人の物で両者が争った時に破損してしまい、犯人が回収しきれずに現場に残ってしまったのでしょう。もしかしたら、それを詳しく調べれば、何か解るかもしれませんね」

「・・・・・そうですか」

「また、何かこちらからお願いする際は御協力お願いします」

「ええ、それは構いませんが、もしこれが殺人だとしたら、なにかダイイングメッセージ的なものは古丸海斗の直ぐ傍に残っていたのでしょうか?」

 

ドラマや漫画では大抵そういうのが残っていたりする。それがあれば殺人は決定的なのだが。

 

「いいえ、そのようなものは残っていませんでした。しかし、例えば、古丸海斗の物だと思われる携帯電話は古丸海斗のポケットの中に入っていたので、もし犯人が古丸海斗の知人なら毒を摂ってしまって喋れない古丸海斗がダイイングメッセージを残す為に犯人がその場から立ち去った後に携帯電話のリダイヤルを苦しみながらも押した可能性もあったのですが、リダイヤルは事件より前だったので、それはありませんでした。ちなみに最後の着信履歴も事件よりずっと前でした。逆にいえば、それがなかったとなると犯人は見ず知らずの他人という線もありますね」

「そうですね」

「貴重な証言、有り難う御座いました。今日の所は帰って頂いても結構です。また、何か重要な事を思い出したら、どうか捜査に御協力下さい」

 

これで帰れるのは有難いが、一つお願いしたい事がある。

 

「それは良いのですが、あのー、警察の捜査状況の進展があったらそれを俺に教えてくれたりなんて出来たりしますか?」

 

一応、俺が関わっている事件だ。犯人も事件の結末の詳細が気になる。

 

「ええ、良いですよ。何か進展がありましたら、こちらから連絡します」

 

俺は加藤刑事に携帯電話番号を教え、帰り支度を始めた。

 

勿論、これが事件だとしたら犯人の事は気になるが、今の段階では突き止めようがないようだったからこれ以上は訊かなかった。解れば教えてくれる事を約束しただけで充分だ。

しかし、殺人だとしたら、何故古丸は殺されたのか?

何か恨みを買われていたのか?

だとしたら、犯人が他人に対し殺意まで芽生えるものだったのだから、相当大きなものであった筈だ。

そう考えながら、俺は警察署を後にした。

 

そう言えば、夕食まだだったな。

色々と付き合わされて慌しかったから、忘れていた。

古丸の事は気にはなるが、今はそれよりも兎に角、明日の闘いに備えて、早く飯を食って、アパートへ帰って休みたい。

 

俺は暫く歩き当初の予定を変更して、目に入った近くの定食屋に入った。

家庭的な雰囲気の店だ。

席は四人席のテーブルが四席、カウンターが六席だ。

小さな店だ。

俺の他に客は三人いる。

大学生風の若い男。

じじい。

スーツ姿の中年サラリーマン。

皆一人で座っている。

 

「いらっしゃいませ。一名様ですか?」

「はい」

「カウンター席で宜しいでしょうか?」

「はい」

「こちらへどうぞ」

 

そう若い女店員に言われた俺は案内されたカウンター席に着いた。

隣に座っていたスーツ姿の中年サラリーマンが携帯電話をポケットの中に入れ、俺の領域を広げたくれた。

俺は軽く会釈をした。

さっきの店員が直ぐ水を持って来てくれた。

 

「御注文が決まりましたら、お呼び下さい」

 

俺は壁に貼ってあるメニューを見渡した。

 

「すみません、注文いいですか?」

 

直ぐに決めた。

「はい、どうぞ」

 

近くで机を拭いていた店員に声を掛けた。

 

「唐揚げ定食一つお願いします」

「はい、かしこまりました」

 

何となくそれにした。

正直腹一杯食べられれば何でも良かった。

そう言えば、今回の事件はどのレベルの事件だろう?

全国ネットでやる程のニュースなのか?

まぁ、ここは東京だから恐らくそうだろうが、俺が関わった事件だ。

出来れば観てみたい。

 

ふと、店の壁に掛ってある時計を見た。

今は二十二時三十八分だ。

そろそろ、事件系のニュースが流れる頃だ。

丁度、店にはテレビもある。

そして、チャンネルもニュース番組だ。

都合が良い。

 

案の定、テレビを観ていたら、あの事件のニュースが流れ始めた。

死亡したのは古丸海斗、明南大学四年だった。

第一発見者の話によると毒のようなもので倒れて、救急車で病院まで運ばれたがで死亡したとニュースキャスターは言った。

 

その通りだ。

急に、高揚感が芽生えた。

今の俺はテレビにその正体不明の第一発見者として知れ渡っている。

少し、有名人になったような気分だ。

なら、いっその事、出演料を・・・・・って出る訳ないか。

 

そんな下らない事を考えていたら、店員が唐揚げ定食を持って来てくれた。

レタスの上に唐揚げと六個とその付け合わせとしてマカロニサラダ、豆腐とワカメの赤だしのみそ汁、茶碗から溢れ出す位の白米と細かく刻んだ干したくあん。

良い組み合わせだ。

俺は早速、カウンターに置いてあった割り箸を一つ取り、割り、唐揚げを一つ箸で挟み、口に運んだ。

サクサクの衣の中に閉じ込められていた肉汁が口の中で解放され溢れ出す。

当たりだ。

さっきの意見は取り消そう。

至福の時だ。

これにして正解だった。

今度は口の中で肉汁がある内に白米を口に素早く運んだ。

このマッチングが堪らない。

今度はみそ汁の出番だ。

ダシが良く効いている。

これも当たりだ。

 

俺は勢い良く、全てを平らげた。

倒れている男を見た後なのに食欲には敵わなかった。

最後に水を一気に飲み干し、会計を済まし、店を出た。

他のメニューも食べてみたい。

これからの行きつけにしよう。

これで俺の良く行く店のデパートリーは五軒に増えた。

しかし、今はそれよりも早くアパートへ帰りたい。

そして、ベッドに寝転びたい。

 

そう欲念した俺は家路を急いだ。

しかし、アパートへ着いた頃には時計は二十四時を過ぎていた。

それから、俺は風呂には入らず、スーツ姿のまま直ぐにベッドの上に倒れた。

気付いた時には朝だった。

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