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メモリーズ ~第十一章 決断 その1~


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第十一章 決断 その1

 

翌日、今回の様々な苦悩の元となったあの現場を訪れた。

ここに来るのはあの日以来だ。

心の中でここに来るのを避けていたのかもしれない。

休日の昼間なのに妙に静かだ。

周りには誰もいない。

子供の騒がしい音もしない。

するのはほぼ一定のリズムの車の走る音と風で木が揺れる音だけだ。

 

・・・・・よし、まずは証拠だ。

しかし、何かそれを探すのに良い案はあるのか?

大抵の古丸海斗の所有物だった物は警察に押収されている筈だ。

しかし、例えば古丸海斗がどこかにダイイングメッセージを残す為に彼女の指紋が付いた物を彼女に気付かれないように放置したといった物などがあるかもしれない。

見切り発車状態だが、何もしないよりはマシだ。

俺は頭より体をまず動かすタイプだ。

よし取り敢えず、古丸海斗が倒れていたこの周りから探そう。

警察が見付けられなかった何か出て来るかもしれない。

 

そう決めた俺は膝を地面に着けながらあの死体があった場所を隈なく探し始めた。

無我夢中で土を掘り返し、雑草が毟り取った。

軍手を持って来ていなかった俺の手は案の定、直ぐに泥塗れになってしまった。

 

ふと、公園の時計を見てみたら、十三時三十四分だった。

確か、ここに来たのは十三時前だったから、探し始めてからもう三十分以上も経ったのか。

 

・・・・・よし、ここから少し移動して探してみよう。

そう決めた俺は立ち上がり、他の場所を人目を気にせずに探した。

 

・・・・・うん?

誰だ。

あの遠くにいる背の低い女は?

さっきから、ずっとこっちを見ている。

黒のトレーナーに身を包んでいる。

年寄りか?

確かに怪しい行動だが、大事な事なんだ。

ほっといてくれ。

 

それから、一分経った。

俺は黙々と地面に膝をつけて探している。

 

・・・・・うん?

あの年寄りの婆が近寄って来たではないか。

いちいち、物珍しいからって、近寄って来るなよ。

俺は今、忙しんだ。話し掛けるなよ。

 

「・・・・・あんたもかい?」

 

 願いも叶わず、その老婆は俺を放っておいてはくれなかった。

 

「はい?」

 

ここは適当にあしらおう。

 

「いやね、この前、あんたと同じように真っ昼間からそうやって、地面に這いつくばって、何かを探していた女がいたもんで、ついね」

 

この公園で俺と同じ事をしていた女?

・・・・・まさか。

 

「そっ、それは本当ですか?」

「ああ、そうだよ」

 

もしかしたら、その女とは織村加奈の事ではないのか?

 

「その人はどんな女性でしたか?」

「私より、若くて結構綺麗な女だったよ」

 

・・・・・織村加奈だ。

間違いない。

だとしたら、彼女が古丸海斗を殺害した事はもう間違いない。

あの理由がなければ、あの清爽な女がこの公園でそんな野蛮な事をする筈は無い。

 

「それはいつの事でしたか?」

「えーと、確か、先月の土曜日の二十八日だったと思うよ。もう歳だから、記憶力が最近落ちて、自信は無いけどね」

 

自信よ、あってくれ。

しかし、もしそれが正しければ、あの事件があった日から五日後後の話だ。

だったら、その時まだ、彼女が警察に渡したくない物があるという事だ。

・・・・・いや、あったという事だ。

警察が彼女を疑っていない今、警察が発見したのはなさそうだ。

だとしたら、それも彼女の手に。

 

「その女の人は結局それを見付け出す事は出来たのですか?」

「さぁあね。それが終わる前に私は帰っちゃったからね。分からないよ。特別、興味があった訳ではなかったし」

 

という事は見付け出したという可能性もあるという事か。

 

「まぁ、兎に角あんたも頑張んなよ」

「はい、有り難う御座います」

 

俺はそう礼を言うと、その貴重な情報を提供してくれた御婦人は去って行った。

これで希望が見えて来たが、その反面、探しても徒労の可能性も出て来た。

俺は前者の可能性を信じ、諦めずに他の場所を探した。

 

それから一時間経った。

しかし、成果は相変わらずなかった。

・・・・・よし、これ以上探しても無駄なようだ。

彼女がもう既に証拠を処分したかもしれない。

取り敢えず、証拠は後回しだ。

彼女の古丸海斗殺害方法に切り変えよう。

考えるべきはどうやって彼女が古丸海斗に毒入りの缶コーヒーだと気付かれず、飲ましたのかの一点だ。

女である彼女が力で勝てない男の古丸海斗に強引に力づくで飲ませたとは考えにくい。

よって、古丸海斗は自分からそれが毒入り缶コーヒーだとは知らずに飲んだんだ。

俺がもし古丸海斗の立場なら、自分が今持っている缶コーヒーが毒が入っている筈がないと思えば、何の躊躇いもなく、それを飲む。

しかし、それまで面識がなかった彼女はとっさに古丸海斗を殺害しようと決めた。

だったら、古丸海斗は殺害されるだけの彼女に対するそういう行為を自覚していた筈だ。

それにもかかわらず、古丸海斗は毒入り缶コーヒーを飲んで死亡したという事実。

古丸海斗があの時、苦しみながらこの程度の行為では自分が横死されるなんて思いも寄らなかったと俺に言いたかったのだろう。

 

俺は周りを見渡した。

彼女は古丸海斗が飲んだ缶コーヒーに毒を入れた。

これは事実。

そして、その缶コーヒーは古丸海斗が買ったコーヒーだとしたら、自分が今、そこの自販機で買った缶コーヒーなのだから、それを飲む事自体は当り前だ。

しかしそれだとしたら、彼女は古丸海斗に気付かれないようにそれに毒を仕込む事が出来たのだろうか?

公園の自販機で買った物は普通、買ったらすぐに飲む。

缶コーヒーが自販機の取り出し口から出てきた瞬間から古丸海斗がそれを口にするまでの間で他人が毒を缶コーヒーの中に混入させる。

果して、そんな隙が生じるのだろうか?

その缶コーヒーは彼女が買った缶コーヒーだとしたら、毒を入れる事はそれ程難しくなさそうだ。

しかし、それだとしたら、古丸海斗はそれを安直に飲むのだろうか?

それにそれだとしたら、彼女はその缶コーヒーの缶の蓋を開けるまでの行為をしなくてはならない。

そうしなければ、毒を缶コーヒーの中に入れなれない。

注射針で中身に毒を混入させるという手もあるが警察は缶にそんな痕があったなんて言っていなかったからそれはない。

 

「ハッ、クシュン」

 

突然、大きなくしゃみが出てしまった。

それもそうか。

家を出る前より、冷え込んで来ている。

長袖シャツ一枚で来たのは失敗だった。

もう一枚薄い上着かなんか羽織ってくれば良かった。

確か今日の日中の最低気温は十五度だった。

まだ、五月だ。

俺は両腕を摩り、摩擦を誘った。

 

・・・・・うん?

そう言えば、あの古丸海斗が殺害された日の夜も肌寒かった。

寧ろ、あの日の方が寒い位だ。

それにもかかわらず、古丸海斗は半袖のTシャツ一枚にジーンズという姿だった。

それは鮮明に覚えている。

その格好では当然、今の俺みたいに寒く感じる。

 

・・・・・確か、あの缶コーヒーはホットだった。

そして、死体の近くには自販機。

缶コーヒーの中に毒。

死体の近くに転がっていた毒入りの缶コーヒー。

古丸海斗のナンパ癖。

ネズミの実験。

真砂への殺害回避日と古丸海斗の死亡日は同じ日。

・・・・・・・・・・もしかして・・・・・もしかして、彼女は古丸海斗ですら実験に使ったのではないか。

そうだったら、古丸海斗はこれ位の行為では自分は殺害される筈なんかないと思うのは当然だ。

今の仮説はこうだ。

日頃から、真砂に対して殺意を持っている彼女は四月二十三日の新商品の試食日に真砂を殺害しようとした。

しかし、彼女はある事情で先月の試食日に真砂殺害を止めた。

そして、その日は普通に仕事を終わらして、自宅に帰ろうとした。

一方、古丸海斗は四月二十三日、いつも通り大学の講義を終わらして、ある用事も済まし、森下公園付近を歩いていた。

そして、偶々目に入った森下公園にいた綺麗な女にいつも通りに声を掛けた。

その綺麗な女こそ帰宅途中だった彼女だった。

見ず知らずの男に声を掛けられた彼女はその日の殺害計画失敗の鬱憤もあってそれに嫌悪を感じた。

それにもかかわらずこの男は必要に自分に迫って来る。

そして、遂に怒りの沸点に達した彼女はこう思った。

 

今日、使えなかったこの毒をこのチャラい男に実験として使えないか?

この毒がどれ程効くのか試したい。

 

そして、この状況でどうやってこの男に毒を飲ませようか考えた。

しかし、そんな急にはなかなか良い案が思い付かなかった。

彼女はそれでも考えた。

そして、遂に古丸海斗の姿を見て、良い案を案出出来た。

古丸海斗の姿を良く見てみると半袖にジーンズという姿だった。

冷え込んでいる夜にしてはその格好では寒い筈だ。

彼女はこう考えた。

それを利用して、ホットの缶コーヒーをこいつに奢って、それに毒を入れて、渡して飲まそう。

古丸海斗も当然、寒く感じていて、温かい物が欲しかった筈だ。

そして、彼女は「寒くないですか?」と言って、古丸海斗に缶コーヒーを奢ってあげると言った。

当然、そんな心遣いを受けた古丸海斗は何の迷いもなく有り難うな筈だ。

断る理由なんてない。

そして、彼女は公園にあった自販機まで一人で行って、ホットの缶コーヒーを買い、蓋を開け、隙を見て毒を入れ、それを古丸海斗に渡した。

蓋を開けてくれた古丸海斗は寧ろ彼女に感謝した筈だ。

そして、何の疑いも持たずに古丸海斗はその缶コーヒーを飲んでしまい、体内に毒が回り、その場に勢い良く倒れてしまった。

その後、彼女は直ぐに落ちている缶コーヒーの自分の指紋を拭き、強引に古丸海斗の指紋を缶コーヒーに付着させ、一目散にその場から立ち去った。

その直後、何も知らずに、駅に向かっていた俺がその途中不気味な呻き声を聞き、その方へ行ってみると森下公園で倒れている男を発見した。

その男が古丸海斗だった。

 

これだと全ての辻褄が合う。

何も推理の欠陥がない筈だ。

・・・・・よし、最低でも俺の中ではもうこれは決定としよう。

そうとなれば、後は彼女が古丸海斗を殺害したと証拠だけだ。

そう決めた俺は無い頭を使って、精一杯考えた。

 

・・・・・そうだ。

あの自販機の中の小銭や札の中から、彼女の指紋が発見されたらどうだ。

俺では調べられないが、量は多いが警察に頼んでやって貰えば、調べられそうではないだろうか?

・・・・・いや、駄目だ。

あの事件は一カ月程前だ。

そんなに経ってしまったらもうとっくに業者が回収してしまっているだろう。

運良く、その回収先のお金在処が分かったとしても、誰かが素手で触ってしまってはもう彼女の指紋は消えて、他の者の指紋で指紋も付いているかもしれない。

いや、そもそも他の所へもう流通してしまっているかもしれないし、例え運良く、その在処が分かったとしても他のお金と混ざってはもうそんな量、調べる事なんて物理的に不可能だ。

それに例え、彼女の指紋がそのお金から見付かったとしても、この森下公園の一回でも自販機を利用しただけの証明で、古丸海斗に缶コーヒーを奢って、それに毒を入れたという証拠にはならない。

欲しいのは彼女が古丸海斗を殺害した証拠だ。

俺は再び考え始めたが、突然道路からクラクションが鳴り、集中力が途切れてしまった。

 

・・・・・例えば、古丸海斗の持ち物から彼女の指紋が検出されれば、あの日初めて会った彼女は古丸海斗を殺害した証拠となる筈だ。

しかし、もしそれがあったとしてもそれは警察にもう押収されて、今はない筈だし、警察が今、彼女を疑っていない事実からそれは警察も持ってはいないだろう。

 

俺はまた精一杯考えた。

彼女が缶コーヒーをその場に残したのはこれが殺人と分からせない為だ。

もし古丸海斗が死んだ原因の物が死体の傍になかったら、これは殺人だと気付かれる可能性が高くなる。

何故なら、ある原因がなければある結果が生じないからだ。

つまり、古丸海斗が毒を飲んだ原因がなければ、古丸海斗が毒を飲んだといった結果は生じない。

死体の傍に毒入りの缶コーヒーがなければ、古丸海斗を死亡させた原因のその物は誰かが持って行ったという事になる。

つまり、それをしたのは毒を缶コーヒーに入れた者であり、犯人が必ず存在するという事になる。

自殺や事故の線は消え、殺人の線しか残らないという事だ。

だから、彼女は缶コーヒーを倒れている古丸海斗の直ぐ傍に放置した。

そして、その前に、自分の指紋をハンカチかなんかで拭き取り、古丸海斗の指紋を付けて、ここに放置してその後、公園から去って行った。

・・・・・確定した仮定とこの行程の中に必ず、何かある筈だ。

 

諦めずに再び考えた。

ちょっと、待てよ。

普通ナンパするならずっとその相手の傍にいる筈だ。

にもかかわらず、彼女は自販機で缶コーヒーを買い、古丸海斗に気付かれずに缶の蓋を開け、毒を入れた。

実際にこんな事が可能だとしたら、古丸海斗は彼女から、少しの間離れた筈だ。

ナンパしている最中にその相手から、離れる原因といえば自ずと限られそうだが、一体何だ?

・・・・・そうだ。

突然、古丸海斗のスマホが鳴ったからか?

・・・・・いや、警察の話によれば、古丸海斗の最後の着信履歴は事件よりもずっと前だった筈だ。

よって、その可能性はない。

 

俺は頭の中を一旦、リセットした。

・・・・・よし、今度は彼女の方が古丸海斗の傍から少しの間、離れた前提で考えよう。

ナンパしている者から一瞬離れる方法か。

どういう方法があるんだ?

・・・・・そうだ。

彼女が古丸海斗にトイレに行きたいとか適当に理由を付けて、行ったのならば流石にあのナンパ野郎は獲物から離れるのではないのか。

今、俺の目の前に映っている自販機の傍には確かに公衆トイレがある。

そして、彼女がトイレから出たら、直ぐに自販機で缶コーヒーを買って、蓋を開けて毒を入れる。

それを待っていた古丸海斗に渡し、何も知らず古丸海斗はそれを飲んだ。

これだったら、彼女の方が古丸海斗から離れて、毒を入れる姿を見られない筈だ。

・・・・・いや、例えそれが正しくても彼女の指紋付きの古丸海斗の所有物はない。

証拠がなかなか見付けられず、話が脱線して来てしまった。

 

俺は頭を拳で軽き叩き、深呼吸をした。

彼女は古丸海斗を毒で殺害した。

もし俺がその時、古丸海斗の立場だったら、どうする?

ナンパした相手に毒を飲まされ、倒れてしまった。

 

・・・・・助けて欲しい。

まだ、死にたくない。

俺はここで死ぬのか。

生きたい。

 

そう考えるだろう。

 

・・・・・駄目だ。

こんな事を考えるべきではない。

冷静に考えよう。

 

公園の時計の針が十四時を指し、音が鳴った。

・・・・・ちょっと待てよ。

俺が古丸海斗を発見した時、彼はまだ生きていた。

つまり、古丸海斗は即死しなかったのだから、彼女が去って行った後、抵抗するなり、ダイイングメッセージを残すなり出来た筈だ。

それが出来るなら、必ずダイイングメッセージを残した筈だ。

それにもかかわらず現場にはダイイングメッセージが残っていなかった。

つまり、古丸海斗はダイイングメッセージが残せなかった。

何故時間があったのにもかかわらず古丸海斗はダイイングメッセージを残せなかったのか?

 

手詰まりになった俺はふと、道路を見た。

すると、その先に小学生位の子供が歩いていた。

 

・・・・・あの子供も今、早く大人になりたいとでも思っているのだろう。

俺もそうだったように。

しかし、大人の世界は自分が今考えている程甘くは無いし、楽でもないし、面白くもない。

後、十年もすれば、現実が分かるだろう。

あの頃に戻りたいとでも思うだろう。

しかし、今はまだ夢を見るが良い。

そんな事大人になったら、絶対に見られないのだから。

 

・・・・・うん?

・・・・・あの子供?

・・・・・そっ、そうだ、古丸海斗はあの日あの時、初めて彼女と会ったのだから、彼女の名前は知らなかった筈だ。

肝心な事を忘れていた。

俺が今、あの名前も知らない見ず知らずの少年の事をあの少年と呼んだように。

だったら、彼女という名前のダイイングメッセージは残せない筈だ。

古丸海斗が相手の名前を知らない今の俺と同じ立場だった名前のダイイングメッセージはあの~な女とか書くしかない。

だったら、古丸海斗は別の方法でダイイングメッセージを残そうとした筈だ。

たかがあれだけの事で自分をこんな目に遭わせた奴を何としても指し示したい。

苦しんでいる時に思い付く、人生最後のアイデア。

相手の情報が分からなくても後から他人が特定出来る物・・・・・指紋か。

指紋なら、自分が知らなくても構わない。

古丸海斗が残したダイイングメッセージは自分が知らなくても後で警察が調べれば、ダイイングメッセージになる彼女の指紋しかない。

只、自分が持っている物に彼女の指紋を付ければ良い。

だったら、古丸海斗は最後のあがきとして無理矢理自分の持ち物を彼女の指紋を付けて、それをどこかに置いた・・・・いや、どこかに投げたんだ。

彼女は現場にダイイングメッセージを残されている事には間違いなく気付いていた筈だ。

何故なら、自分の指紋を古丸海斗の物に付けさられて、それに気付かない筈はないからだ。

折角、苦労して付けた彼女の指紋付きの物をその場にそのまま置いてしまったら、当然、彼女に直ぐに持って行かれてしまい処分されてしまう。

いや、そもそも、後で彼女に折角付けた指紋を直ぐに消されてしまうか。

だから、彼女に後から探されないように・・・・・いや、探しても見付けられないようにダイイングメッセージを残す為に後で誰かに発見されるように願って、どこかに投げたんだ。

しかし、毒を摂ってしまって苦しんでいる古丸海斗は果して、正常な状態である彼女の手を握り、強引に指紋を付ける事なんて難しい事、本当に出来たのだろうか?

 

俺は腕組みをしながら砂場の辺りを五回、回った。

・・・・・いや、一度だけチャンンスはあった筈だ。

彼女が缶コーヒーに古丸海斗の指紋を付ける時だ。

彼女が自分の指紋を缶コーヒー付ける時、今度はお返しとばかりに近寄って来た強引に彼女の手を引っ張り、自分が持っていた何かに指紋を付けて、それを直ぐにどこか遠くに放り投げた。

その物はなるべく、小さい物が好ましい。

何故なら、その時、幾ら夜だったとしても大きい物だったら、どこかに投げた後、彼女にそれを見付けられてしまうからだ。

・・・・・よし、もう直ぐでゴールだ。

 

俺の体温は一気に上昇した。

一体、その物は何なんだ。

硬貨では当然駄目だ。

そんなの自分の物だったと他人が判断出来ないからだ。

そもそも、拾った人間はラッキーと思い、どこかに持って行ってしまう可能性もある。

そして、紙等で作られている風でどこかに飛んで行ってしまう物も好ましくない。

後で誰も発見されないかもしれないからだ。

だったら、ネックレスや指輪か・・・・・そう言えば、あの刑事は死体の傍に何かの金属の破片が落ちてあったと言っていた。

もしかして、その金属の物体は犯人と争ったから、破損したのではなく古丸海斗が無理矢理その金属で出来ていたある物を壊したから古丸海斗の死体の傍に落ちていたのではないか?

 

金属の破片・・・・・チェーンか?

だとしたら考えられるのはやはり、ネックレス等か。

もし、それを倒れている状態で投げたとすると、そんなに遠くには飛ばせない筈だ。

だったら、ここからそう遠くない場所にあるに違いない。

 

ふと、さっきの御婦人の話を思い出した。

・・・・・もしかしたら、あの御婦人の証言の彼女がこの公園で地面をずっと見て、何かを探していた物とはこれの事ではないか。

だから、あの現場に行って、周りの目も気にせずに探した。

今度は確信を持って、探し始めた。中腰になって、必死に雑草を掻き別ける。

 

それから十分経った。

しかし、目当ての物は一向に見付けられない。

俺はそれでも体力を振り絞り夢中で探した。

 

・・・・・もしかしたら、この公園の敷地内とか限らないのではないのか?

倒れながらも小さくて、それなりに重たい物だったら公園の外へ投げようと思えば、投げられるのでは?

その方が、彼女に見付けられる可能性も低くなる。

そう推測した俺は森下公園を出て、古丸海斗の倒れていた近くを詮索した。

今の俺は事情を知らない見ず知らずの者から見れば、只の不審者だろう。

しかし、そんな事、気にしている場合ではない。

 

それでもなかなか見付けられなかった。

俺は再び古丸海斗の立場になって考えた。

 

俺がもしあの時、古丸海斗の立場だったら・・・・・。

苦しんでいて倒れている自分の呻き声に気付いてくれた者が自分に近寄って来てくれた。

勿論、今目の前にいるであろう見ず知らずの者に助けて欲しいがもし自分が死ぬのならば、自分をこんな目に遭わせた犯人を必ず伝えたい筈だ。

だったら、あの時、毒で喋れない古丸海斗がする行為は自ずと限られてくる筈だ。思い出せ。

確かあの時の古丸海斗の必死の行為を・・・・・確かあの時、何なら指でどこかを指していた気がした・・・・・もしかして、あの古丸海斗が指を指したのはダイイングメッセージを投げた場所を示したのではないのか?

そして、喋れない古丸海斗は必死に俺にこの事を伝えたかったのではないのか?

確か、あの方向は古丸海斗から見て、こっちだった筈だ。

俺はその指を指した方へ行ってみた。

これで最後にしてくれと願って、また膝を着いて探した。

 

それから十分経った。

しかし、それでも見付からない。

全て俺の考え過ぎだったのか?

そう、諦めかけていた。

・・・・・うん?

あれは・・・・・遂に、見付けたのか?

それは金属だった。

俺はその金属をハンカチで拾い上げた。

その物体を凝視するとその正体は壊れているネックレスだった。

これで俺の推測は90%以上の確率で当たっているだろう。

 

最後に明南大学に行き、これが古丸海斗の物だったのかが確認出来れば、真実が全て判る筈だ。

ずっと俺が知りたかった彼女の社会人時代の物語も。

 

そう決意した俺はそれをポケットの中に入れ、その足で岩本町駅に向かった。

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